だれもが持つべき「24 時間の設計図」

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なにも考えずに次の2つの記事をみて、どう思われますか?

適正と考えられている 6-8 時間よりも短い、6時間未満の睡眠しか撮っていない人は、早く亡くなる可能性が 12% 高いというFuturity の記事

毎日3〜4時間残業をしている人は、していない人にくらべて 60% も心臓などの循環器系の疾患になりやすいというBBC の記事

こうした統計的な研究は多いのですが、困ったことに因果関係を証明することができないという弱点があります。長い残業時間がどういうからくりで心臓疾患につながっているかは自明ではありません。ただ、「そういう傾向がある」としかいいようがないのです。

しかし証明を待たずとも、どうも**「バランスのとれた24時間の使い方」が長期的に見てメリットがありそうだ**という気にはなるのではないでしょうか。そうした見地にたって次のような話題にふれると、私はもう思わず叫びだしそうになります。

GTDがやりたい。フォトリーディングも勉強したい。マインドマップもたくさん書きたい。ビジネス書を毎月50冊ずつ読みたい。マラソンもやりたい。アロマテラピーもやりたい。英語の勉強をしたい。心理学も勉強したい。プログラミングも勉強したい。今私が作った話ではありません。実際、セミナーの懇親会で、このような相談をいただいたのです。「だから朝4時に起きたいのです!」なるほど。 「3種類の見積もり時間」ライフハック心理学

逆ですよ! 逆! ブロードバンド通信スピードを競っているわけではないのですから、単位時間あたりにどれだけを詰め込めるのかで成果を測っていたら敗北は必至です。たとえ「ビジネス書を 50 冊読めた」としても、「51冊読んでいる人」には負けてることになるのですから。

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すると必要なのはスティーブン・コヴィーが「7つの習慣」で第2の習慣として挙げた通り、「Begin with the End in Mind」という考え方なのだということになります。24時間でいうなら、最低限充てるべき時間を見積もって、その余暇で何をできるかを算出するわけです。睡眠最低でも6時間、仕事と移動に現実的にみて10時間…という具合に引き算をしていった結果得られる24時間の設計図、これを境界条件とするのです。

その設計図に問題があるなら、そのバランスをなんとかするためにダイエットを行うわけですが、人間の限界を越えて睡眠時間を減らしたり、まったく遊びのないスケジュールを作ることはそもそも無理です。

なるほど睡眠時間を減らせばもっと読書はできるかもしれません。しかし現在の無理な不摂生をして寿命が数年でも縮んでしまうのなら、それは悪魔との取引ということにならないでしょうか。

逆に、1冊で10冊分のおいしさをもっている本を選ぶといった工夫や、あるいは一日1時間の学習を時間方向に伸ばして実践するなど、方法は様々にあります。むしろここが時間管理の楽しくもチャレンジングなところなのです。

一応24時間に収まったとしても、GTD3分。読書5分。などとなってしまうなら、やろうとしていることが単純に多すぎるのです。「3種類の見積もり時間」ライフハック心理学

あるいは「指輪物語」のビルボを引用して、少なすぎるバターを大きすぎるパンにのばしたような味気なさと言ってもいいかもしれません。

パンを減らしてバターを味わうこと。これは無限に時間があるわけでも、無限に生きられるわけでもない私たちの唯一の生きる道です。しかしそれでも毎日少しずつ、長い時間をかければ、驚くほど遠くまで行けるのだからやめられません。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。