OmniFocus の心理:もっとも高機能でもっとも難解な GTD アプリを使いこなす
現在最も忠実に GTD のプロセスを実装しているアプリはどれかときかれたら、 OmniFocus が最初に思いつきます。
Things、Toodledo、Remember The Milk のような似たようなアプリやサービスは存在していますし、それを使うことになんの問題もありません。しかし OmniFocus はそうしたアプリのなかでも特異な境地に達しています。
しかし残念ながらそのすばらしい高機能が、 OmniFocus をどこか難解で使いにくいアプリにしているのも事実です。私も OmniFocus をメインで利用するようになるまでにはかなりの時間、アプリの挙動と戦う必要がありました。
そんな OmniFocus を使いこなすための心構えについて、興味深い記事がNobauer の記事で紹介されていました。その最も頷ける部分を引用すると:
If you’re just borrowing ideas from GTD here and there, like the idea of grouping your to-do lists by context, you’re missing almost everything GTD has to offer, which is a terrible shame.
もしあなたがリストをコンテキストでまとめるといったように、GTD から考え方を借りるだけですませているなら GTD が与えてくれる恩恵のほとんどを見失っているといってもいいでしょう。それはとても残念なことです。
これはなかなか強い主張です。 OmniFocus の何がそんなに特徴的なのでしょうか? 記事を元にちょっとみてみましょう。
ストレスフリーの心理学
元記事によると、GTD の恩恵は ToDo リストの見栄えがコンテキストでまとまって美しいといったことではありません。それは単なるリスト作りの工夫に類するもので、むしろ GTD がもたらすストレスフリーの恩恵は 100% 頭の中にあるものを外部のシステムに預けることによって生まれる心理的なものなのだということです。
ここで 99% と 100% の違いは非常に大きくて、本当に気になっていることが全部とらえられている状態ではじめて GTD の意味が生まれるわけです。
これは私も個人的に体験したので納得がいきます。数時間頭のなかにあることを書き続けて、もうさすがに何も出ないだろうと感じてからも、場所を変えて頭の雰囲気をリセットしてから、さらに出し続けるというエキササイズをやりつづけ、驚くべき数のプロジェクトが出尽くしたあとは、それまでの「試しに軽く頭を空にしてみた」ときに比べて圧倒的な開放感がありました。
こうした体験を試してみたいという方は、David Allen さん公認のハックとして、紙を前にして「What has my attention? いま気になっていることはなんだ?」という問いをとにかく繰り返してみるということをしてみてください。気になっていることがなくなるまで続けると、少なくとも数十個、多ければ数百個の「気になること」が見つかるはずです。
「GTD ができている」ということは、このメンタルな状態を作り出す訓練ができたかどうかということなのです。
OmniFocus はなにを可能にしてくれる?
このベースとなる状態を OmniFocus のなかにつくりだすことができると、この不思議なアプリは独特の輝きを発し始めます。
多くのアプリが「リストのまとめ方」の UI に多くの労力を割いているのに対して、 OmniFocus はどのように膨大なリストを減らして表示するかという部分に独自の機能がたくさん盛り込まれています。
プロジェクトとコンテキストのビューの分割
OmniFocus をもっとも特徴付けるのが、この二つのビューの存在です。たとえば「職場」と「家」と「店」とにまたがる、アクションの多いプロジェクトがあったとしても、コンテキストビューで「職場」を選べば、その場でできることしか表示されません。
プロジェクトビューが「頭を空」にするためのビューであるといえるのに対して、コンテキストビューは「実際に仕事をするため」のビューなのです。
この二つのビューはプロジェクトビューを Command + 1 で、コンテキストビューを Command + 2 で切り替えることができるというショートカットを覚えていると操作感がかなり変わります。
日付と並行作業
OmniFocus のプロジェクトには多くのツールが可能なように、締め切り日や、繰り返しといった情報を付与できますが、「いまアクションをとれるか」という基準でさらに細かい指定ができます。
たとえばプロジェクトの「種類」ですべてのアクションが A → B → C という具合に順序良くやらなくてはいけないのか、A,B,C を同時並行で実行可能なのかを指定できます。細かいことのように思えるかもしれませんが、これが指定してあるか否かで、リストに表示される Next Action の数が動的に変わるのです。つまりはリストをいかに少なくみせるかという工夫なのです。
また、プロジェクトの「ステータス」は実行中・休止・完了・放棄という具合に操作可能です。たとえば「休止」にすると、そのプロジェクトはペンディングとなりますので、プロジェクトビューで見ることはできても、コンテキストビューの Next Action には表示されないわけです。
開始日の指定も OmniFocus にとっては重要なパラメータです。たとえばあるプロジェクトの存在を把握していても ◯月×日まではなにもアクションがないなら、開始日をその日に指定しておきます。すると、その日になるまではアクションが表示されませんので、無用にリストが長くなってこまるということがありません。
パースペクティブ
多くの場合、私たちは自分たちのツールをある特定のウィンドウを開いたり、カラムの整列の仕方をさせて、その状態で仕事をするのが一番わかりやすいという状態があります。いちいち立ち上げるたびにこの状態にもっていくのはなかなか苦痛です。
OmniFocus はこうした、ツールを使っている「状態」を一つのパースペクティブとして保存して、あとで呼び出すことができるようになっています。 OmniFocus を使っていて調子がいいなと思ったときは、そのパースペクティブを保存しておきましょう。それがあなたなりに OmniFocus を使うのに便利な切り口だからです。
まとめ
元記事の要点をまとめると、「GTD が実践出来ているかはツールが高機能であるかではなく、頭を空にしてツールがそれを受け止められるか」ということになります。
OmniFocus の場合、プロジェクトビューが「すべてが頭の外に保管されている」という自信を生み出し、コンテキストビューとさまざまな絞り込み方法が「いま・ここでできること」だけを引き出せるように設計されています。
もちろん OmniFocus 以外のツールでも GTD を実践することは可能ですが、そのときにも注意したいのはツールをいじくっている時間の方が長くないか? ツールの機能が GTD に制限をかけていないかということです。
いれるタスクの数にしたがって伸縮自在なツールである OmniFocus は今のところ GTD アプリの横綱の位置を保っているといえそうです。6月にリリース予定の iPad 版がいまからとても楽しみです。