これぞ「断る力」の究極の形、エドムンド・ウィルソンの断り状
どんな依頼も無慈悲に断る手紙が Tim Ferriss のブログで紹介されています。
この断り状を作った作家であり、批評家でもあったエドムンド・ウィルソンという人物を日本で知っている人は少ないでしょう(私も知りませんでした)。しかしアメリカ黄金期の 1920 年代に雑誌 Vanity Fair の編集を手がけ、文芸批評を通してフィツジェラルド、ヘミングウェイ、フォークナー、ナボコフといった作家が知られるきっかけを作った人物だと説明されたら、なるほど大変な目利きだったのだと納得できるのではないでしょうか。
彼は自分のもとにやってくるたくさんの講演依頼、ちょっとずつ時間を奪いとる「小さなお願いごと」をすべて断るために以下の手紙を用意していたそうです。
エドモンド・ウイルソンは報酬なしに以下ができないことを残念に思います:
原稿をよんでさしあげること
本や雑誌に寄稿すること
賞の審査員をすること
レクチャーをすること
会合でスピーチをすること
夕食後の演説をすること
放送番組に出演すること
あるいは、いかなる場合にも以下を行うことができないことも悪しからずご了解いただきたい。
シンポジウムに参加すること
連作詩などの共同作業に参加すること
セールスの文章を作成すること
図書館に本を寄贈すること
本のサインをすること
自身の個人情報を提供すること
自身の写真を提供すること
署名に名を連ねること
どんな用事があるのかわからない人を迎え入れること
このどれか一つに該当するお願いごとが入ってくると、彼はその該当する部分にチェックをいれて送り返していたのだそうです(チェックをいれた手紙の写真は Tim のサイトでみることができます)。
いったいこの手紙が何度利用されたのか、ウィルソンがいつもこのテンプレートを使っていたのかは不明ですが、「自分が協力するつもりがないこと」が明快に決められているのはとても参考になります。実際に相手に送らなくても、こうした「絶対にしないこと」のリストを作っておくのは有益ではないでしょうか。
p.s.
元記事の元記事にあたる Crooked Timber には、こうした「寡黙な知識人」が死に絶えて、かわりにウェブで積極的に自己アピールをする「自称知識人」が増えていることを批判する文章がのっていて、こちらも面白いです。