GTD の習慣で子供を成長させる

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GTD は本として登場したのは数年前のことかもしれませんが、David Allen さんのコンサルティング会社の手法としては長い間用いられていました。そして彼の会社の中には、GTD の考え方を自分の子供に教えて、GTD で育て上げたという人もいるのだそうです。

David Allen さんの GTD Podcast で、10 歳のころから母親に GTD の基本を教えられて育ったというギャリソン・ハワードさんのインタビューが載っていて、子供を持つ親として興味深い内容でした。

GTD で子供を育てる

いまはもう 21 歳で演劇を学んでいる大学生になったギャリソンさんが 10 歳のときに手ほどきをうけたのは、GTD の中で最も大事な習慣、つまり「頭のなかからすべてを取り出して書き留める」という習慣についてでした。

それまでは部屋が汚くて手のつけようのない普通の子供だったギャリソンさんですが、ある日、母親がコーチとなって部屋の整理をはじめたのでした。それは普通の、「ものを置き換える」だけの整理ではなく、1冊の本に至るまで「何のつもりで置いてあったのか」を明確にして、「次のアクション」を引き出す頭の中の整理だったのです。

そうして「頭のなかにあるもの」をすべて紙に書き留める習慣を身につけたギャリソンさんは、特に外の子に比べて成績が良くなったわけでも、宿題の先送りをしなくなったわけでもなかったそうですが、そのかわり、「物事を忘れる」ということがない子供時代を過ごせたと回想しています。

たとえば高校時代の宿題にしても、なにかやろうとしている活動にしても、「やるべきことを忘れていた」という状態はなくなり、何をすべきかがクリアーになっている状態で、自分の選択としてやる・やらないを決められたということです。

大人になった今では、子供の頃からやっている「頭を空にする」という習慣をさらにカレンダー、プランナーなどにマッピングさせて、日常のことから長期的な夢までも管理しているのだそうです。

特に「いつかこれをやりたいな」と思っていることを Someday / Maybe のリストに入れておいて時々レビューするだけでも、リストのその項目が引力を生じさせているかのように物事が実現にむけて転がり出すのを最近は感じているのだとか。

長じて本物の GTDer になったという感じですね!

これから GTD を子供に教える場合は?

ここで「早いうちから子供の考え方を GTD にしばるのはよくないのでは?」と短絡的に考えてはいけません。

注目したいのは、彼が GTD のシステムを意識するようになったのは大学生に入ってからで、最初は**「頭のなかにあるものを書き出す」という習慣だけから始めていた**という点です。

プロジェクトとは何か、コンテキストとは何か、といった細かい話を一切教えなくとも、この第一の習慣を教えることだけから始めるので十分なわけです。そしてこの第一の習慣は、子供に「思考を整理する」ためのツールを与えてくれます。九九がかけ算の近道を教えてくれるのと、同じです。

この、「頭を空にする」というコンセプトを子供に教えるのは難しいのですが、ここでハリー・ポッターの本のなかにでてくる Pensive と呼ばれる魔法の道具を比喩にもってくるのもいいだろう、と彼はアドバイスしています。

この道具は作中の魔法学院の校長先生が「物事を頭の中からとりだして見てみる」ために使っていたのですが、まさに GTD でいう「頭を空にする」のと似ているからです。

「物事を書き出しているだけで、たくさんの出来事があったとしても、ストレスを感じることなくマネージできるようになった」というギャリソンさん。私たちが学んで獲得しなくてはいけない習慣を子供の頃から身につけているというのは、なんだかうらやましいですね…。

私もちょっとこれを参考に、自分の子供に「忘れない」頭の使い方を少しでも伝えられたらなと、今から画策しています。

まだ赤ん坊ですが!

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。