ネガティブに状況を把握し、ポジティブに行動する
「前向きに考えること」いわゆるポジティブ・シンキングについて Seth Godin さんが興味深い記事を書いていました。
ポジティブに考えること自体がなにかを生み出したり、可能にするのではなく、むしろネガティブな考えを打ち消していることに意味があるのだという指摘です。
No, positive thinking doesn’t allow you to do anything, but it’s been shown over and over again that it improves performance over negative thinking.
ポジティブ・シンキングそれ自体は何かをなしとげるわけではない。しかし繰り返し示されてきたのは、それがネガティブに考えているときに比べてパフォーマンスを向上させるということだ
たとえば、テストを受ける前に簡単な算数の問題を解いて正解をとった人のほうが、難しい「模試」を受けて打ちのめされたあとの人よりも統計的に有意に良い成績をとる傾向があるという話があります。
二つのグループの間で違うのは試験に臨むときの態度だけです。注目したいのは、どんなに試験が難しく、客観的事実は自分にとってシビアであったとしても、そうした不安を一時的に保留にした方が成績が良くなるという点です。ポジティブに考えたからうまくいったのではなく、ネガティブなことを打ち消したから、うまくいったというのが本当のところだというわけです。
Seth は続けて、なぜ頭のいいひとがネガティブな考えにとらわれてしまうかという理由について「それが気持ちがいいからだ」と指摘しています。ネガティブな考えは簡単で、客観的にみて現実的ですし、恥をかいたりすることから私たちを守ってくれます。
逆にポジティブ・シンキングは「客観的なデータはどうあれ、ほとんどの人がこの試験で落ちるといわれていても、自分だけは例外だ」と言い切ってしまう思考であるわけです。勇気があって、リスキーで、ちょっとバカっぽい。
思考して、状況を理解して、予測をたてる能力があるからこそ、何かを成し遂げられると私たちは思いがちです。でもその反面、行動の瞬間には、決断、勇気、過信、無謀さが必要でもあるわけです。
なんという矛盾なのだろうかと不思議になってきますが、この絶妙なバランスがとれる人生はきっと楽しそうですね。
ほとんどの人はネガティブの側に針が振れていますから、まずは「行動におけるポジティブさ」を訓練することから始めるのが、このバランスへの第一歩といえそうです。