「自分の仕事は GTD に向かない」と嘆く前に
「GTD はとてもよさそうだけれども、うちの仕事はそれに向いていない」「どうも GTD は現実的ではない、少なくとも私の職場では」
こうした意見はたびたび聞きます。David Allen さんに会ったときにもこの質問を直接聞いてみたのですが、「 GTD の原理は文化や職種によって変化しない、その適用の仕方が変わるのさ」という答えが返ってきました。
GTD Times にこの話題にもうちょっと具体的にふれた記事がのっていて、GTD がどうしても馴染まないという人へのヒントになるかもしれません。
Work = 現状を変えなくてはいけないすべてのこと
まず最初に記事では GTD の考え方で「仕事」「タスク」とは何かということに触れています。これは GTD の原書にも書いてあったことですが、GTD では「タスク」は**「現状を変えなくてはいけない何か」**ということになっています。
Word で報告書をまとめて提出するのもそういう意味ではタスクかもしれませんが、机の上に残された1枚の紙を片付けるのもタスクなのです。「机の上に紙がある」という状態を「机の上に紙がない」という状態に変えるからです。
GTD の原理とは、こうした**「変えたい」と思っていることすべてをキャプチャーして、必要なコンテキストでそのタスクと向き合えるようにする**ということに他なりません。
実はこの部分は、ビジネスマンでも、研究者でも、お医者さんでも、主婦でも、スポーツマンでもかわりません。「原理」の部分は修正の必要がないのです
GTD のカスタマイズはコンテキストから
それを踏まえた上で GTD を自分の「変えたい」と思っていることに適用するには、コンテキストに注意を向けてそれをカスタマイズするのが一番大事だということを記事では指摘しています。
たとえばいろいろな人のタスクは、コンテキストを意識すれば次のようになるかもしれません。
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ビジネスマン:報告書の 9-11 ページを読んで修正を加える @パソコン
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医者: 患者に関する引き継ぎ情報をスタッフに伝える @電話、@メール
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主婦: 子供の買い物をしておく @雑用、@お店
コンテキストは場所に限ることはなく、「@ミーティング」で会議の場で提示するタスクをまとめたり、「@人名」で特定の人の前で思い出さなければいけないことをまとめたり、「@疲れたとき」で疲れたときにやる気や気力を使わなくてもできるタスクをまとめたり、といったことができます。
面白いのは、この一行一行の左側は「Collection 集める」内容ですが、それが向かう先は人によってまちまちだということです。
たとえば私は滅多に無用の電話をかけたりしませんので、「@電話」コンテキストをわざわざ維持することはしませんが、かわりに「@人名」コンテキストはあって、特定の数人のためのタスク表が維持されていて、ここに電話の用件が入ったりします。
つまりコンテキストを自分の仕事の現状にあわせて設計することによって、 GTD は非常に柔軟、かつ現実的なタスク管理のシステムを作れるというわけなのです。
実は同じ職業、同じタイプの仕事をしていても、タスクとの向き合い方によってこのコンテキストの設計は人それぞれに異なります。逆に言えば、コンテキストの構造を制したら、GTD がかなり実践できるというわけです。
よく GTD のカスタマイズというと「紙でやるのか」「デジタルでやるのか」といったリストを維持する上での話をよく聞きますが、むしろこうした「原理の適用」の部分から始めた方が実効的な力が引き出せそうです。
他の人の使ってなさそうな奇妙なコンテキストを維持している人、いますか?