主婦のためのライフハック:日常の紙を半減する流れ作業とツール

「あれ、処方箋をここにいれたはずなのに? どこかな?」

出かけた先から一筆書きで昼食、薬局と向かうはずだった帰り道が、この一言で脱線してしまいました。自宅にもどって探してもみつからず、あきらめて車にもどってみれば、財布のなかから探していた一枚の紙切れがでてきました。ああ無情、時間ロスは約40分。

こうしたことは別に珍しいことではありませんので時間ロスを責めるつもりはまったくありません。しかし自宅で紙切れ一枚を探していたときに、家内の机回りがたいへんな紙類の山になっているせいで捜索自体がストレスになっているのが見て取れたので、今日の午後は家内の机回りの「整理コーチング」をなかば強制的(笑)に実施していました。

アメリカの経営者に行ったアンケートではアシスタントがものを探していることで失われている時間は週に4時間ほどという統計があります。単純計算で、一年で一日8時間の労働日 26 日分というわけです。ものを1秒でも速く探せる環境を整えるのは、ストレスを下げるとともに、時間を生み出す素なのです。

今回はライフハックになじみのない人に説明しながら作業するときの、整理のポイントについてまとめてみました。

紙の山を3つの山に

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最初に気づいたのは、家内の机の周囲にはたくさんのクリアフォルダーがあって、何もかもがそこに投げ込まれているという点でした。一見整理してあるように見えるのですが、実は**「保管するもの」と「アクションをとるもの」が折り重なって入っている**ので、ちょっとしたものを探す場合でも記憶をフル動員するか、すべてのクリアフォルダを開かないといけないという難点がありました。

ここで「アクションをとるもの」というのは「クレジットカードのキャンペーンに応募するつもりでとっておいたチラシ」「記入して投函する葉書」といったものです。つまり「アクションをとればゴミ」とわかっているものです。

一方、アクションのない「保管するもの」には「友人から届いた葉書」「写真」といったものがあります。所定の場所にいれて必要な時間だけ保管するものです。この2種類のものは、決して同じ場所にあってはいけないのです。

そこでライフハックに慣れていない家内のためにも、最初の2時間は、GTD の基本でもある**「アクション可能」「保管物」「ゴミ」を選り分ける**という作業を通してこの概念を覚えてもらうことになりました。

概念的には右のワークフローに従って、「ものにアクションがあるか、ないか」という判断についてゆっくりとチェックを行っていきます。

アクションがあるものは付箋を貼って行動を定義して、いつまでに廃棄するか明記して一つの箱に入れます。この箱が、家内の「インボックス」になるわけで、ここが空になれば「やること」は終わっているというわけです。

他人の目を通して整理する

次に行ったのは、保管するものをさらに**「原本が必要なもの」と「スキャンしておけばいいもの」**にわけることです。

たとえばすでに支払いが終わった明細の多くは、証拠さえ残っていればよいものですので「ScanSnap して捨てる」山に入れていきます。

それに対して原本を残すべきものについては、「オークション」「家計管理」「応募書類」「資料」といった大きな分類にしてフォルダにいれていきます。

この部分を他人とペアで行うのには大きなメリットがあります。というのも他人が見張っていることで、分類の山が混ざって定義が薄まってしまうのを防げるからです。

「空の封筒の山のなかに、写真入りのものが混ざってたよ」

「ああ、これは姪の写真ね」(写真ごと元の山に戻そうとする)

「待って。封筒は文具の山だけど、写真はアルバムの山行きだよね?」

こんな調子です。分類の定義があやふやになると、「右のものを左に、左のものを右に」動かしているだけの形だけの整理になってしまいます。他人からみても分類がわかりやすくなっているように(けんかにならない程度に)チェックを入れていきました。

主婦の力強い味方 Evernote

最終的にスキャン・スキャンなし・ゴミの分類が、4:4:2くらいの割合になることを目指して作業をすすめましたが、ここで最後に登場するのが ScanSnap と Evernote です。

うちは夫婦で物持ちがよいのでなかなか「捨てる」という決断ができないのですが、ここに**「アクションをとって捨てる」「スキャンして捨てる」という選択肢を加えれば最終的に6−8割ほどののものを捨てられる**ようになります。

そしていくらスキャンしてもハードディスクがファイルでいっぱいにならないようにするために強力な味方となってくれるのが、やはり Evernote です。

実は家内はふだんから私のおさがりの MacBook を使って Spotlight や Spaces も使いこなしていたので、そろそろ… Evernote も、とタイミングをねらっていたのでした。

詳しい人むけのツールに思える Evernote ですが、今日の整理で、家の雑多な情報を整理するのにも威力を発揮するということに気づかされました。たとえば:

  • レシートのノートブックを作る: レシートの原本は6月、7月といった月別のフォルダーに投げ込むとして、確定申告用に ScanSnap したものを Evernote に投げ込んで「確21」とタグを打つだけで経費計算の手間が非常に楽になります。

  • **説明書:**家には驚くほどたくさんの説明書が転がっています。多くは1年に1回みるかどうかというものですので、メーカーからダウンロードしたうえで Evernote に入れておけば買ったときについてきたものは捨てられます。

  • レシピ: 主婦の紙資料の多くは夕食のためのレシピなどです。これらの多くはウェブからとってくるものですので、これを Evernote にいれて「魚料理」「肉料理」「中華」といったタグを打っておくだけでレシピデータベースができあがります。

などです。我が家だけの話かもしれませんが、家内の Evernote に対する反応は「オークションの在庫管理にもつかえそう」と、意外に好評。継続して利用してもらえるのではないかとちょっと期待しています。

とりあえず都合3時間ほど整理に(強制的に)つきあっていましたが、書類の3割程度が消え、ワーキングスペースが増えたおかげで机の周囲がかなりすっきりです。スキャンするための書類もだいぶでてきたので、最終的にはもっと減るはず。

これで捜し物のストレスが減って、ものを探す手間が一年で数十時間減るきっかけになればしめたもの、という気がしました。

でも集中力を要求する作業だったので、終わってみると臨月の家内がちょっと疲れてしまいました(笑)ごめん!ごめんよー。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。