「みえる!」「できる!」不安を味方につける2つのバランス

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ToDo リストを作っても仕事ができる気がしない? ミッション・ステートメントを書いてもなんだかザワザワとした気持ちを拭うことができない? その原因は、「不安」を味方につけてないからかもしれません。

金曜日 土曜日はマインドハックス心理学の佐々木正悟さんの「マインドハックス研究会」に参加していましたが、第3回のテーマは「不安」でした。

きっと膨大な研究と知識が背後にはあったのですが、佐々木さんは心理学に不案内な私のような素人にもわかりやすく、「不安」を心理学の2大潮流から説明し、日常的にそれを応用するヒントを与えて下さいました。

佐々木さんの研究会から学んだことをベースに、応用方法を自分なりにまとめてみたいと思います。

無意識 VS 条件反応

「不安」を誰もが名前を知っているフロイトの心理学で説明するなら、それは心的ストレスが無意識の中に沈み込み、見えない力となって私たちに影響を与えている状態といえます。

こうした不安の根源はなかなか意識できないように「抑圧」されていますが、もしそれを意識の世界に浮上させることが可能ならば、「正体見たり」とばかりに不安を軽減することが可能だというのがフロイト学派的な見方です。

一方、「行動主義」的な見地で不安を説明すると、仕事やタスクに対するストレスは学習されたものだといえます。

最初は仕事やタスクに向かうという行動自体は「嫌なもの」ではなく、いわば「中性」の状態だったのに、繰り返し仕事にまつわる嫌な出来事や、ストレスが付随して起こるうちに「仕事・タスク = ストレス」という風に条件反応が起きているというわけです。パブロフの犬と原理的には同じですね。

一見行動主義の方が直感的で応用可能に見えますが、なかなかそううまく話は運びません。

「みえる化」と「できる化」

行動主義の考え方をふだんのタスク処理に対して当てはめて考えてみると、**「タスクに向き合うというプロセス自体をポジティブなものに変える必要がある」**と言えると思います。

たとえば GTD が人気を博している理由の1つに「ネクスト・アクション」を全て書き出すという手法がストレスを大幅に軽減してくれるからというのがあります。

100 ほどあるタスクをそれを実行できる場所(コンテキスト)とタイミングに分割し、さらに「次に実行すること」だけに集中するという約束事を作れば、ある時点で向き合わなくてはいけないタスクは大幅に減ります。

GTD のおかげで整理された ToDo リストは「これなら出来るぞ!」というポジティブな心理状態を作り、それが行動の原動力になってくれます。タスクという不安要素を「できる」ことのリストに変えたといえます。

一方、タスクのリストをいくら書きだしても、パズルで一面の大きな青空のピースを組み合わせようとがんばっているときのように、「何がどこに収まるのかわからない!」という気持ちになることもあります。

GTD でいうなら、これは「パースペクティブ」がよく見えていないことから生じているものだといえます。目の前のタスクと、50000 フィートレベルのタスクが一致していない場合です。フロイト的な説明による無意識の作り出す不安と、こうした不安には似通ったところがあります。

つまり、いくら ToDo リストを作っても不安がぬぐいされない場合、不安は目の前のタスクにあるのではなく、「本来向き合うべきものに向き合っていない」という潜在的な問題から生じているといえるわけです。

こうしたときは、安心できる場所に逃げて、ゆっくりと時間をかけて人生のすべてをレビューするというのがおすすめでしょう。

目の前のタスクをなぜ実行しなければいけないのか、自分なりの理由が「みえる化」させるわけです。

この「みえる」と「できる」のバランスが必要だというのが、今回の研究会で学んだ最大の収穫でした。

不安そのものを味方に付ける

いくらすばらしいミッション・ステートメントを書いていても、机の周りに何から手を付ければいいのかわからないものが山積していたら、それを見るだけでも不安のどん底に落ち込むことでしょう。

一方で、雑用ばかりがリストに膨大に記録されていても、何でそれをしなければいけないのか分からなければ、まるで水だけでお腹を膨らませたときのような苦しい圧迫感から逃れられないはずです。

不安が起こるこの2つのルートが把握できれば、これを最適な状態にバランスさせることでかえって行動を起こすための起爆剤に使えるというのが面白いところです。

こうした短期的思考と長期的思考のバランスというのは自己啓発書で繰り返しでてくる話ですが、心理的ストレスという見地でも同じ事がいえるというのも興味深いです。

ToDo リストがある人はぜひ一度、目を通してみて下さい。

書かれているタスクに「現状のコントロール」の不安を解消するものと、「根本の問題」を解決するものの両方が含まれているでしょうか。

タスクリストはその量ではなく、あるいはこうした「不安」をぬぐいさる「質」の面でレビューするべきものなのかもしれません。

佐々木さんのマインドハックス研究会は、いまのところ毎月開催していますので、興味のある方は佐々木さんのブログで告知を注意して追ってください。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。