読まずにはいられない書評に共通する4つのポイント
第一回シゴタノ!読書塾の選考委員に参加させていただきました。いやあ、楽しかった! こんな本が、こんな書き方があるんだと、選んでいる側として楽しかったです。
選ぶ側にいるのはたいへん恐縮で、自分も参加したいくらいなのですが、今回の「堀」賞は、先日も紹介した Ko’s Style の「仕事がつまらなく感じた時にできる3つのこと」という記事です。おめでとうございます!
ところで書評にもいろんなスタイルがあって、急に書けといわれても困ってしまうのではないかと思います。「良い書評って、どんなのだ!」というわけです。
私自身文章修行中の身の上で偉そうなことが言えるものではないのですが、少なくともシゴタノ!読書塾の「堀賞」を狙う上で、ここさえ押さえておけばかなりの確率で選ばれるというポイントが4つほどあります。ここさえ押さえれば私は少なくともコロッとおちます。
今回選ばれなかった人がこれらのポイントを欠いていたとか、そういう意味ではなく(今回の参加者は皆チャレンジングな人ばかりでした!)、一般論として書評を評するときに私が「こういうものを読みたい」と願うポイントでもあります。
次回のシゴタノ!読書塾で堀賞を狙い撃ちしたい、あるいは堀だけは勘弁願いたいので狙って外したい、いずれの使い道でもけっこうですので、参考になれば幸いです。
1. 最初の一文で引き込んでいるか?
選考しておいて何ですが、一般論として書評というものはどちらかというと退屈な読み物です。他人が読んだ本について読む、というメタ的な作業ですから、相当面白くないと困るわけです。だからこそ、「おや? これは読まないと損かもしれない」と読者を引き込む最初の一文が重要です。
アテンション・ゲッターと呼ばれる**最初の一行は、時候の挨拶ならぬ、「技巧の挨拶」**なのだと心得て工夫するとそれだけで記事のお得感が二割増しになります。
2. 本を楽しんでいることが伝わってくるか?
目の前の友人がいったい何の話をしているのかさっぱりわからないのだけれども、とにかく楽しそうに説明してくれるものだから、なんだかこちらも可笑しくなってきてしまったという経験はないでしょうか?
「絶対読むべき」「この本を読むべき理由は A、B、C…」と理屈でせめるよりも、「いらいらしていた気分が一気に明るくなったよ!」「読んでいるうちに朝になってた!」という具合に書いている本人が読書を楽しんでいた・そこから満足を得ていたことがわかると、こちらも楽しくなったり、感心したりするものです。そしてそういう説明をされた本に、人は否応なく吸い寄せられます。
3. 本の本質を一撃で突いているか?
書評というからには本の章立てを箇条書きにして、全部紹介したいという気にどうしてもなりますが、そこをグッとこらえ、目を細めて本の「急所」を狙い撃ちするようにした方が、短い文章でインパクトの大きい構成を作れます。
**読者がその記事を「面白い」と思うか「面白くない」と思うかはたいてい数秒で決まります。**この一瞬のスキャンの間に、「面白そう」というイメージを投じなくてはいけないのですから、情報は少ない方が得です。
逆に言うと、本質さえ見逃してなければ本を全部読んでいなくても書評が書ける………のですが、これはさすがに大声で言うわけにはいきません。
4. 個人的な体験や経験を織り交ぜているか?
書評だから自分のことなんて書いてはいけないと思うかもしれませんが、むしろ逆で、なぜ自分にとってこれが大切な一冊になったかという背景を描き込むと、読者は背景を通してその本をイメージしてくれます。
ややこしいアナロジーですが、私は書評において本そのものはドラマにおける BGM みたいなものだとよく感じます。それに対して「俳優」にあたるのはあなた自身の文章です。
俳優としてのあなたの演技(文章)が効果的な BGM によって引き立てられ、それを見た人が「ところで、この BGM (本)は何だろう? どこで手に入る?」と言えばしめたもの。
そのためには、俳優が BGM にあわせた演技で魅了しなければいけません。名曲がかかっていても演技がダメなら、演技も、BGM も、互いに居心地が悪くなってしまうわけです。
私もいつもここで失敗したり成功したりしますが、ここが一番やりがいを感じるところでもあります。
いかがでしょう? 他に「ここを外しちゃだめでしょう」という点があったらコメントにどうぞ。
次回のシゴタノ!読書塾の予定は未定ですが、また次回にはこのブログでも告知しますので、とっておきの本を用意して待っていてください。
Keep on reading!