恐れを感じていなければ、成長はない

fear.jpg Four Reasons Why Fear is a Creative’s Friend | LifeDev

「成功」と「達成」に向かうことが常に高揚感や充実感にあふれた感情を与えてくれるものだったら、きっと栓がぬけたお風呂の水のようにそちらに向かって抗しきれずに吸い込まれてゆくでしょうに。

でも実際には、そこに到達する前、特に達成する直前には自己不信と不安感の闇が広がっているものです。そしてこの直前の闇をおそれるあまりに、よけいな行動で自分をごまかしていることがなんと多いことか。

しかしすべての感覚や感情にはそれが与えられた意味があります。痛みが危険を教えてくれると同じように、未知に対する恐怖、未確定な状態に対する不安感にも、自分がおかれた状況を客観視できるようになるための積極的な意味があるということが LifeDev の記事で紹介されていました。

ともすれば私たちは恐怖を感じたくないあまりに、積極的な意味のある「恐れ」さえも回避してしまいます。しかしそれではせっかくのチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。逆手にとって利用可能な4種類の「恐れ」について、元記事から意訳でご紹介します。

  1. 恐れは危険を教えてくれる: 恐れはなじみのない状況や立場にたったときのレスポンスの仕方を教えてくれます。なじみのない状況には危険がひそんでいるかもしれませんので、「恐れ」はいつも以上に周囲の状況に注意力を割くことを要求することで私たちをその危険から守ってくれるのです。こうした「恐れ」を必要以上に「恐れ」る必要はないのです。

  2. 恐れは成長の途上にあることを保証してくれる:私たちは「今までにしたことのない行動」に対しては自動的に恐れを感じるように作られていますので、たとえ自分のためになる行動であっても恐怖と無縁ではいられません。

何か新しいことを学んだり、挑戦しているときの「恐れ」はむしろ成長していることの証で、逆にいうならそれを感じていない場合は成長はしていないといってもいいのです。

  1. 恐れは何が大事かを教えてくれる:たくさんの選択肢が与えられているこの世の中で、私たちにとって何が大事なのか確信をもつのは容易ではありません。一つの指標になるのは、それを失うことに対してどれだけの「恐れ」を感じているのかを客観的に考えてみることです。

失いたくないと思っていること、あるいは拒否されることが怖いあまりに実行していない行動は自分にとって最も大事なものである可能性が高くなります。「恐れ」を、自分の心の鏡に使えるのです。

  1. 恐れは満たされていないギャップを明らかにしてくれる:大事なことを中途半端にしたままでいると、「恐れ」が生じて「まだ不十分だよ」「まだ手を加える必要があるよ」というリマインダとなってくれます。これはクリエイティブな仕事で特にそうですが、こうした「恐れ」が、自分の作品に存在する「完成版との間のギャップ」を明らかにしてくれるのです。

自分にとっては特に 4 番目が大事な点です。例えば絵を描いている人をみていると、素人目にはほとんど完成しているのに描いている本人には手を加えるべき場所がはっきりと見えているということがあります。それは芸術家だったら誰しもがもっている作品との間の緊張感と言い換えてもいいでしょう。

ただ、この「恐れ」を積極的に利用するときに注意すべきなのは、「非生産的な恐怖」で必要以上に仕事をふくらませないという点です。

というのは「これじゃあダメだといわれるかもしれない」「もっと準備しなければ認めてもらえないかもしれない」といった恐れは劣等感や焦燥感から派生したものであることが多いからです。このような、仕事を先送りしてしまう恐怖は、自分の行き道のガイドとなってくれる生産的な恐怖と注意深く見分けないといけません。

ルーズベルト大統領有名な演説の中で「我々が恐れなければならないのは、恐れることそのものである。進歩を後退へと麻痺させてしまう、漠然とした理屈に合わない恐怖感こそ、恐れなければならない」と表現した「恐れ」とは、まさにそうした「立ち止まらせる」恐れなのです。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。