毎日を繰り返すルーチンにする。「ルーチン力」佐々木正悟(翔泳社)

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著者である佐々木さんから本をいただいてすっかり時間が経ってしまったのですが、ここ最近繰り返して読んで理解を深めていたのが、この「ルーチン力 」です。

金字にオレンジの「力」がかっこいいですが、100ページ未満の薄い本ですので本屋の棚に並んでいるときにはこの、オレンジの「力」が目印になります。

私は物理屋なので、昨今数多く出版される「〜力」というタイトルの本を見ていると「本当にそれは『力』なのか?」と理屈っぽく考えていたりします。

ニュートンの第2法則的に「力」かというのも気になるのですが、「本当にそれは原因・結果を測定しうるものだろうか」という点でも気になります。

本書のテーマであるルーチンを作るという考え方の力は、毎日の作業や、長期間の作業をどれだけ「型」に当てはめ、自分にとって摩擦係数の少ない「仕組み」にできるかという意味でちゃんと作り込めば作り込むほど効果を測定できるものです。ですので力といって差し支えないと思います。仕事の速度が変化するという意味でもニュートンの第2法則的といってもいいかもしれませんね。

本書では仕事そのもののルーチン化のヒントにとどまらず、プレゼンや企画書作りと言ったクリエイティブな側面を含んだ作業のルーチン化、大きな仕事を細分化するスケジューリングのルーチン化についての具体的なテクニックが盛り込まれています。

ルーチン化のために利用できるさまざなツールが紹介されているので手にとってすぐに利用できるハウツー本としても読めますが、じっくり読み込むことで、そもそも「仕組み」を作るメリットはなんだろうかということにもヒントを与えられます。

本書の随所にでてくるのが次の3つの考え方です:

  1. 型に流し込むことで難しい判断を先取りする

人間はたとえつまらないことであっても、判断を前にして立ち止まってしまう動物です。そうした「ブレーキ」のおこるポイントを減らすだけでも、心理的な負担は大幅に減り、効率をあげることができます。

  1. 「これでいける」という安心感を与えることで作業への抵抗感をなくす

これは私自身が仕事で「これではダメだ!」という苦々しい気持ちで立ち止まっているものがあるせいで、強く共感しました。本書では苦手な人へのメールの仕方、気乗りのしない仕事の進め方といった事例を通して、「安心感」を先に立たせる手法について繰り返し解説しています。

  1. 際限のない作業を有限にする

2 とも関係しますが、終わりのない仕事の連続を前にすると人は不安になったり、強いストレスや徒労感を感じるようにできています。そこで ToDo リストの作り方なども「たくさん仕事があるぞ!」ではなく、「これだけやれば OK だぞ!」と手が動きやすく作るという工夫が効果を持ちます。

本書のテクニック部分を読むときに、こうした考え方の部分を下地にして、「自分ならこの哲学をこのツールに応用するぞ」といった自分なりのルーチンの作り方が発想できるようだったらしめたものです。

薄いですがページ数の3倍ほどの情報量がつまっている本だと思います。

本屋でこのロボットを見かけた際には、ぜひ手にとってなぜ「ロボット」なのか? というところも含めてお読みいただければと思います。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。