成功本読んで成功できると思っていた? ガックリする前にこの一冊:「成功ハックス」大橋悦夫(青春出版社)

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正直に認めようじゃありませんか。いわゆる「成功」本を読み、書いてあることに 100% 同意し、本の書いてある通りに 100 % 実践して成功できたという人は、いるでしょうか? 私は皆無だと思います。

当然のことですが、書いている側が本で語っている経験はあなたのものではありませんし、成功本が語る「成功」のロジックも万能ではありません。その上、著者の経験、あるいはロジックは万人向けの「書籍」という形にした時点でどこか現実を越えたものとなってしまい、良い言い方をすれば「メタ化」「純度の高まり」、悪く言うなら「机上の空論」化が始まっています。

読者としての私たちがそうした本を読むとき、それをそのまま適用できるはずがありません。本から与えられた「気づき」を自分なりに咀嚼し、自分の人生に取り入れるための「自分語」への翻訳作業が必要なのです。

成功本であれ、実はどんな本であれ、この「翻訳」が出来ることが習得できたということなのですが、こと成功本に関しては理解以上に、行動できたかが肝心です。良い成功本というのは、理解を進めると同時に読者を行動に駆り立てるものなのです。

しかし実際は、成功本に跳ね返されて、行動できない自分を責めたり、「やっぱり自分はダメだ」と落ち込んだりしている人もいるのではないでしょうか。

そんな人のために書かれたのかもしれないのが、シゴタノ!の大橋悦夫さんの新刊「成功ハックス」 です。著者から献本をいただきましたのでここ数日読んでいたのですが、この本は成功本の「取り扱い説明書」、あるいはミッシング・マニュアルといってよいと思いました。

そんな「成功」のマニュアルである本書についてかいつまんで紹介します。

成功術のリバース・エンジニアリング

「成功ハックス」は「目標」「行動」「継続」の三章に分かれていて、それぞれが:

  • 目標をはっきりとさせるためのテクニック

  • 新しい行動を生み出すためのテクニック

  • 習慣を定着させるためのテクニック

に対応しています。LIVE HACKS! でもそうだったように、それぞれの章に数多くのテクニックが紹介されているのですが、それぞれがタイマーを片手に、手帳やノートに向かって手を動かすことで進めることのできる、極めて実践的な手法の紹介に徹しています

たとえば「目標をつくれ」と成功本に書いてあったときに、すぐにその場で A4 の紙をつかんですらすらと人生の目標を書くことができたでしょうか? ちょっと無理がありますね。

本書ではそうした「成功本」の定番テクニックを「実際にステップを踏んで実践できるマニュアル」として提供しており、誰でもその場で実践することができます。本書を読む時、タイマー、ペンは必須です。

たとえば私が気に入って、さっそく7日間だけとりあえず試しているのが、本書で紹介されている**「毎日1つ新しいことを始める」というハック**です。

放っておけば、人生はどんどんとルーティン化していってしまいます。新しい取り組み、新しい発想を毎日一つ取り入れるというのは、思った以上に大変ですが、やってみるとたった三日続けただけでも心が洗われてゆくように軽くなり、新しい行動が生み出しやすくなってきました。

こうした「成功の種」ともいえるテクニックが本書には35個も載っていて、すべてが料理のレシピのように分解され、ステップ式になっています。いうなれば、数ある成功術の本をリバース・エンジニアリングして、仕組みを解析してしまったようなものです。これを利用しない手はありません。

ただ、このような形式の本だと、一つだけ危険なのは書かれた成功術のステップが読者に馴染みにくい場合があるかもしれない点。料理本のレシピに納得がいかないときのように、「どうしてこんなステップをふまなければいけないのだろう?」こう思う瞬間も何カ所かであるかもしれません。

しかし実はそうしたポイントが、著者と読者であるあなたの「ずれ」が顕在化している部分であり、あなたが自分の個性を発揮することで、よりあなたに合った「成功ハック」を作れる箇所なのです。本書の「成功ハック」は、そうしたテンプレートとして利用できます。

本書を読み、「なるほど、でも自分だったらこうするぞ」という気持ちが生まれたなら、行動と成長への扉を開くのは、もうほんの先のことなのです。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。