「丈夫じゃなければ仕事はできない」一流の研究者の健康法
今年の3月、伝説の先生をアメリカに訪問したときのことです。東海岸にある、この有名大学のキャンパスを先生が自ら案内してくださいました。
キャンパスの中心に近い場所に車を駐車した先生は「mehori さん、荷物は車の中に置いていった方がいいですな!」と私に声をかけました。
「え、ええ。わかりました」と、不思議に思いながら荷物を置いてドアをしめると、先生はなぜだか準備運動をしています。
「ではいいですか。行きましょう!」と一声かけると、先生は猛ダッシュで走り始めました。
「(え、ええーっ!?)」と声にならない叫びをかみ殺しながら、私は必死で付いてゆくほかありませんでした。
「案内」というのはご自身の習慣であるランニングのついでだったのです。冷たい雨が降り始める中、それから45分の間、「ここが数学の研究棟です!」「ここがスタディアムです!」「ここが学生寮です!」と息せき切った案内が続いたのでした。
50 年も研究を続けてきた一流の研究者のキャリアを支えているもの、それは強靭な肉体の力なのでした。
そんな、運動が仕事にもたらす効用について先生から学んだことを書いてみます。
一流の研究者の運動の習慣
先生は現在日本に来ているような長期出張中であっても、けっして運動の日課をやめることがありません。月・水・金はランニング、火・木はヨガ、そして土日は水泳と、毎日何か体を動かしています。
その徹底ぶりは、土日の片方に予定が入っていて水泳ができない場合には、平日のどれかを選んで午後は早退し、週末の分の水泳をこなしているほどです。
なぜ、ここまで運動をするのかと訊いてみたことがありますが、その答えは単純明快でした。「なぜって、仕事を長く続けたいと思うなら、体がまず丈夫じゃなきゃダメだからです!」
若い頃、仕事がうまくいかないときにも、先生は一心不乱に外を歩いたり、走ったりしながらなぜプログラムがうまく動かないのかを必死で考えていたのだといいます。歳をとってからは、その習慣が今度は研究それ自体を支えるプラットフォームに変化してきたのだともいえそうです。
もともと体が弱い方だった私ですが、この渡米以来「もっと体力を付けたい」「もっと持久力を作りたい」と真剣に考えるようになりました。というのも、トレーニングは仕事術の基本として以下の利点があるからです。
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ランニング、トレーニングは多少の肉体的な苦痛を伴います。でもそれを「こんな苦痛、屁でもないさ」と言えるように自分を鍛えることができると、さらに大きな苦痛に大しても耐性が強くなります。体が強くなるにつれて心理的にもタフになるのです
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肉体の持久力は、仕事の持久力にも正比例します。体力があれば何でも可能なわけではありませんが、肉体が疲れてしまっているのにいくら頭ばかり働かせようとしても無理なのです。ナレッジ・ワーカーだからこそ、持久力で差をつけることが重要になるのだと最近痛感しています
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体を優先させる習慣が身に付きます。体を痛めつけて無理に仕事をするよりも、健康に長い間仕事ができるようになるために体を鍛える方が、リターンが多いに決まっています。
最近マラソンをするビジネスマンが急増しているというのも、こうした仕事とトレーニングの関係に気づいている人が増えているからなのでしょう。頼もしい限りです。
「mehori さん、こないだは1時間ぶっとおしで泳いでましたよ!」
「そうですか! わ、私も週末は筋トレしてました!」
とりあえず対抗心燃やして、こう返せるように頑張ってます。負けるものか。負けるものか!