Study Style ライフハックス勉強法 (佐々木正悟著、学研)

fig.png その「勉強法」はあなたに合っていますか? | シゴタノ!

博士号までとっているといつも笑顔で「勉強、お好きなんですね」と言われてしまうことがあるのですが、何度でも繰り返します。私は「勉強」それ自体は嫌いで仕方がないのです。

物事を理解したり、「うまくいく」ことにはとても喜びを感じる一方で、形式的な暗記はなかなかできなかったりすることがよくありました。しかしよく考えてみると、それ以外の趣味に関することだったら異様なまでに暗記ができてしまうのは何故かといつも不思議に思っていました。

そうした疑問の一端に、このほどライフハックス心理学の佐々木正悟さんから頂戴した「ライフハックス勉強法」が答えてくれました。

これから読む方の楽しみを奪わない程度に、本の骨子についてご紹介したいと思います。

「自分に合った勉強法」の類型

先に出版された「脳と心を味方につける マインドハックス勉強法」 が「学習を維持するためのプラットフォーム作り」と意識した本なのに対して、「ライフハックス勉強法」は、学習法にフォーカスをあてた本になっています。

「学習法」というと、とかく「とにかく頑張って勉強すればいいんでしょう?」「とにかく暗記すればいいんでしょう?」と一面的に捉えられやすい面がありますし、多くの書籍は自分の勉強法を唯一のものとして主張しがちです。

しかし人の個性によって学習方法は無限にバリエーションがあるはずで、そうした個人差をどのように吸収して「自分だけの学習法」を作るかが問題になってくるのです。しかしこれまで、こうした勉強法のカスタマイズについての本はなかなかありませんでした。

本書では、さまざまな人にありがちな勉強法の類型を、**「暗記型 vs 理解型」「好奇心型 vs 目的達成型」「独習型 vs スクール型」**という軸にそって分類し、それぞれに合った学習方法のヒントを提供しています。

この三つの対比はそれぞれ**「勉強法のし好」「動機付けは何か」そして「勉強方法は何か」**という軸に対応していて、多くの人はこの三軸の上に自分を投影できるのではないでしょうか?

「じゃあ、自分は暗記型なので、その章だけ立ち読みすればいいか」というと、そう簡単でもありません。

私もふだんの研究はどちらかというと「好奇心型」でいきあたりばったりに進める傾向があるのですが、文系の本を読むときにはむしろ「理解型」であったり、いままで触れたことのない分野の学習については「スクール型」であったりといった揺れ動きを自分でも意識しています。

どれか一つの方法だけでは勉強に対する特効薬にはならないので、その場その場に応じて最も良い方法をトライしてゆくしかないのです。例えば私はこれまでうまくいっていなかった資格試験の勉強が一つあるのですが、本書を読んで、もしかしたらこの分野について誤って自分を「独習型」のワクに当てはめていたせいではないかと思い当たりました。

こうした、自分の学習法を見直すきっかけとして、この3次元的な捉え方は有効だと思います。「自分の学習能力はこの程度だ…」とあきらめていたのを、多面的に見直すきっかけになるでしょう。

本書には、それぞれの学習の特徴にあわせて「時間でペース配分すべきか」「学習量でペース配分すべきか」といったアドバイスがわかりやすく散りばめられています。「こうすれば完璧」という小手先の話題よりは、納得することで力を引き出す読み物的な書き方がしてあるので、速読せずに上の3次元の軸を頭に浮かべながら、内容を頭に浸透させる読み方が効果がありそうです。

「最良の勉強法」があるのではなくて、「今の自分の、このテーマに最良の方法がある」。実は当たり前なんだけれども、いまのビジネス書の洪水の中で忘れがちだったことに気づかせてくれる一冊でした。

貴重な御本をありがとうございました!

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。