読書の「時間」対「効果」を上げるための7つのポイント
読書は頭の呼吸です。
読むのは「吸う」方で、それについて書くのは「吐く」方ですが、この二つがそろって初めて本を「読破」できているのだなとよく実感します。
最近、まじめな読書に割り当てる時間が減っていて、頭に新しい養分を入れていないせいもあってこの「呼吸」のバランスが失われているのですが、読書の秋がやってきたのを機に一気に「吸う」方に転じたいと思っています。
そしてその副産物としてこのブログにレビューとして「吐き」出したいと思うのですが、その前に私がふだん読書の準備段階としてなるべく注意するようにしていることについて紹介してみようと思います
私は大した読書人ではありませんので模範になるつもりで書いているわけではないのですが、参考になるものがあれば幸いです。
読書前の3つのフィルター
読書による「効果」を飛躍的に増大させるポイントは「無駄な読書を減らす」という点にあります。そもそも読む価値のない本を減らせれば、本当に攻略すべき本をしぼることができるからです。そのために、ほとんどの場合、自分が読む本は3つの過酷なフィルターをくぐり抜けています。
1:読む価値のある本しか読まない
世の中には、読む必要のない本がいくらでもあります。それはその本自体が無価値だからというだけでなく、「自分にとって価値がない」という、単に相性の問題で片付くものもたくさんあります。相性が悪いのを、無理に読んでいても、お互いに良くないことばかりです。
名作、傑作、話題作、という文句に振り回されずに、**今の自分がこれを読んで楽しいか、将来のためになるか、**といったメリットを考えて、冷徹に見切りましょう。10冊の無駄な読書をする誘惑を退けられるなら、人生を変える1冊に充てることのできる時間は10倍に増えるということを忘れずに。
2:自分のレベルをちょっと越えた本を読む
いつまでも楽に一、二時間で読み飛ばせるような、内容の決まりきった本を読んでいても成長はありません。現在の自分のレベルに比べて、「1レベルだけ」上のものを選ぶことで、本によって引き上げられるようにしましょう。
最近ビジネス本や成功本を読んでいるばかりで「なんだか目新しさがなくなってきたな」と思うようになってきたのなら、それはあなた自身のレベルが高まって次のレベルの読書を必要としているサインかもしれません。
3:準備が必要でないか調べる
たとえ価値があって、ちょうどよさそうな本であっても、基礎的な知識や、前提となる教養がなければ読めない本もたくさんあります。
海外文学がよくこれにあてはまります。学生の頃、小説なんてただ読めばよいものだと思っていた私はピンチョンや、ジョイスなどといった小説家になんの準備もなく襲いかかって数ページで跳ね返されるということをしていました。歴史もなにも知らずによくもそんなことができたものだと今となっては微笑ましい話です。
本に対する憧れだけでその本を読破できるのか、それとも何らかの準備が必要なのかを見極めないと、これと同様に本に跳ね返されて挫折感を味わうようになります。
読書中の4つの注意点
「これだ!」と思う本に出会ったとして、それを読むときにもいくつか注意していることがあります。読書中に注意できることはいくらでもありますが、私にとってはまずこの4つが先にやってきます。
4:「読破」とは必ずしも全部を読むことではない
これはいつも自分にいい聞かせていないと、ついつい忘れそうになります。本はそこから「価値」を引き出すためのものであって、全ての小さなディテールに至るまでを頭の中にいれるためのものではありません。
自分の脳のフィルターを通過させて、自分にとって「面白い」「重要だ」と思った場所がひきだせたなら、細かい部分や、興味がわかない部分は飛ばし読みでも大丈夫なのです。
結果として一言一句まで読んでしまったというのは良いとしても、一言一句を読まなければ理解できない考えるのは、読書人が陥りやすいワナの一つです。
5:「先読み」で頭の中に下書きを作る
「全部を読まない」ために必要な習慣が、必ず「先読みをする」というものです。あたらしい章を読み始める前に、章の長さ、章の構成、どうやら言いたいらしいこと、などをあらかじめ目で読み取っておき、脳内に受け取る情報の下書きを準備しておきます。
長大過ぎる場合は、小説でもこれをやらずには、私は頭が混乱してしかたがありません。
この習慣を実行するだけで、理解の度合いと読むスピードも格段に向上するという効果もあります。
6:常に1冊に集中する
一つの本を読み出したら、他の本には手を出さずに最後まで読み切ります。そうしないと、必ずといっていいくらいどちらかを曲解していたり、要点を忘れてしまうからです。
自分はこれを管理するために、「読書 ToDo リスト」を用意していて、ジャンル、難易度、分量のペースを配分して「次の一冊」をあらかじめ決めています。
7:時間を区切っておく
ここまでいろいろと注意しても、一つの本に何日もとらわれ、進歩がない場合があります。そこで、ページ数に応じて「読了予定日」を設定しておいて、それを無制限に越えないように注意しています。いつまでも一冊の本に足止めをくらうのを防ぐのと、「先へ、先へ」とペースを作るのが目的です。
一つの本に時間がかかりすぎている場合は、まだそれを読むときが来ていないのか、何か準備が足りないのか、何かがあるはずです。残念ですが、その回でのトライを完了させて、それまでに得たものをノートにして保存しておきましょう。
私は学生時代に「魔の山」の上巻を何ヶ月もかけて読んでいましたが、結局下巻に行く頃にはいつも根気が尽き果てていました。それが数年経って、いくつかの長編小説を読んだ後に、不思議なくらいな高揚感で下巻を読めたときの幸福感は今でも覚えています。
おわりに
この7つのポイントは1から7の順番で利用して、最初の3つは読む本を選び出し、残り4つは選んだ本から手際よく「メリット」を引き出すために使っています。
すべていろんな読書術の本にすでに書いてあることですが、無謀な本に手を出しがちで、時間がなかなかとれない私自身のニーズを反映した形に整理したルールというわけです。
もちろん読書の注意点はこの7つに限られませんので、みなさんのニーズと、読書レベルに合わせたルール作りをしてみてください。
私にとって、本の一番良いところは、それが「いつも待ってくれている」という点にあります。一度読んだ本は、再読の時を。思い出の本は、記憶を新たにする日を。そしてまだ実力不足で読めない本は、いつかまたその本をひも解く日を。いつでも、本は待ってくれているのです。
これから秋が終わるまでの間、これまで溜め込んだ、ライフスタイルを考える上で役に立つ本を集中して紹介するようにしてみようかと思います。