Books: 「できる人の直感力」佐々木正悟 (ビジネス社)
科学者が研究を始める瞬間も、それまでの経験知から飛躍した「直感」に導かれることが数多くあります。私のメンターになってくれた先輩もよく「直感だけど、多分こういうことではないかと思う」を口癖にされていました。まだ調べてはいない、でもここにきっと「何か」があるはず、という引力を感じているような言葉です。
しかしこの「直感力」というのは何なのかと説明せよと言われた場合、なかなかもどかしいことになります。直感が生まれる瞬間が捉え難いせいもありますし、説明不能な理性的思考の果てにあるものだからでもあります。
直感力とは何か? それは鍛えることができるものなのか? というテーマは取り組むにはなかなか難しいわけです。
ライフハックス心理学のブログを運営しており、数々のヒット本もお書きになっている佐々木正悟さんの新刊「できる人の直感力・あなたの潜在能力が目覚める30のメソッド 」をご本人からいただきました(ありがとうございます!)ので、時間をかけて読んでみました。
この本では第一章で「直感とは何か?」というテーマに触れて、「そこにないものを知るための力」としての直感力をわかりやすく説明しています。
第二章では「想像力とひらめき」の関係について、そして第三章ではたぶんおおぜいの人が気になるであろう「頭の良さと直感力は関係しているのか?」というテーマに筆がすすめられます。
「直感力」の理解だけでなく、それをいかに日常的に自分に有利に使うかについて第四章が割かれており、第五章では「直感を使うべき場面と、そうでない場面」についてまとめられています。
それにしても難しいテーマを平易に書くための努力がにじみ出ている一冊です。「直感」は言葉になる一瞬手前に生じて、言葉になったあとはどこか捉え損ねた印象を与える感覚です。その理解を助けるために、本書では数多くの心理トリックの例がイラストの形で導入されていて、理解を助けています。
本書はすぐに読み終えられるように作られてはいますが、脳のギアをニュートラルにして、いわゆる「速読」で読んだのでは、肝心の要点を見失いやすいのではないかという気がします。「直感」とはなんだろう? 自分の直感はどのように鍛えられるだろう? という疑問を胸に、何度か目を通していただくことをお勧めします。
いま直感力が足りないと自覚している人は、「直感」が働く瞬間を意識化して、「この感覚か…!」というのを味わってみるのが一番だと思います。そのためには直感が生まれやすい場面を意識しておく必要があるわけです。
直感に対する信頼が生まれたら、それは「あ、ここでも使える」「ここでも!」という具合に今まで見過ごしていた気づきが引っかかることでさらに膨らむはずです。
私は直感の働く瞬間にはなじみがあるのですが、それを鍛える方法については無知でしたので、本書を読んでそうしたテクニックについて興味がわいてきました。
あらためて、本を送ってくださった佐々木さんに感謝いたします。
本の解説は、ブログ「創造マラソン」でもされていましたので、こちらもご覧ください。
知識・経験に基づく直感力(できる人の直感力)| 創造マラソン