[Books] Study Hacks! :小山龍介 (東洋経済新報社)

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「大人のための勉強法」が流行していますが、「格差社会だから…」とか「キャリアを積んでないとリストラされるから…」といった後ろ向きな理由だけではなく、勉強はそもそも非常に楽しいものだということが再認識されて、その楽しみのために実践している人も増えているのではないでしょうか?

でも大人のための勉強法は、子供のそれとはちょっと目先が違います。精神論だけでなく、こうしたかゆいところに手の届く「コーチング」をしてくれる本があるといいなと思っていたところに、このたび、小山さんから新刊の “Study Hacks!” の献本をいただきました。TIME HACKS! や「ライフハックのつくりかた 」などの著書のファンでしたので、心躍らせながら読ませていただきました。

内容

この本は「目標をもって勉強しよう」とか「勉強をするとこんなに得だよ」といった精神論の部分はすっ飛ばして、まっすぐに**「どのようにしてスキルアップをするか?」「そのために必要な環境づくり、ツール、テクニックは何か?」**というテーマに飛び込んでいきます。でもこうした数々のテクニックからしだいに奥深い「アウトプット勉強法」という背後のテーマが見えてくる構造になっています。

テーマは大きくわけて「環境づくり」、「自己管理」、「情報インプット」、「情報アウトプット」、「時間管理」、「波及効果」という分類に分かれており、こうした背骨のテーマが、「ツールハック」「環境ハック」「習慣ハック」といった章に散りばめられて構成されています。

例えば「環境ハック」の章では、集中力を維持して勉強をするために必要な整理整頓の技術から、部屋の色調・空調、姿勢や呼吸法にいたるまで、内容まで、テクニックからマインドフレームに至るまでの話題が詳しく書かれています。

「こんなことにまで気をつかうの?」と驚く部分もありましたが、よくよく考えると、受験をしていたときだって試験前のコンディションや勉強のための環境づくりに気を配っていたのが思い出しました。大人になったからといって、勉強の本質が変わるわけではありませんね。

しかし大人だからこそ方法を変えなければいけないところにも、ちゃんと筆は及んでいます。

たとえば第3章「時間ハック」では「勉強のために長い時間をとれない」という悩みを逆手にとって**「大人の勉強はそもそも長い時間をとらずに最大のリターンを得られる場所に時間を集中投下する」**という点を強調しています。

また、第5章「試験ハック」でも、ふつう試験という言葉に抱くような、努力と根性の勉強法よりは、試験を締め切りとして自分を鼓舞する方法、情報のインプットと同時にアウトプットに重点を置いた勉強方法などといった、忙しい人でも即戦力で使えるテクニックが書かれています。

個人的に愛着を感じたのは、第1章から6章までがとても身近でわかりやすいのに対して、これまで聞いたこともなかった第7章「キャリアハック」の話題です。

勉強を通してどのようにしてキャリアを築いてゆくのか。資格にとどまらず、学んだことをどのように実際生活で活かすかといった話題に言及がされていて、実に深い内容です。

大人の勉強は、子供と違って外から強制されるものではありません。心の恐怖に打ち勝ち、内的な確信に導かれて、自分で道を切り開く冒険だといってもいいでしょう。

本書はそんな知的冒険に向かって一歩を踏み出してみたい、冒険がもたらす高揚感を味わってみたいと思う人のための、良いガイドブックとなってくれると思います。

p.s.

献本をいただけると連絡をうけていたのに、すっかり忘れて amazon でもう一冊買ってしまっていました! いただいた本は大事にとっておいて、あまった一冊は知人へのプレゼントにしたいと思います。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。