GTD の生みの親、David Allen が教える極意とは?

David Allen gives the keys to GTD on YouTube

GTD の生みの親 David Allen が Google で行なったプレゼンのビデオが Youtube にアップされています。今まで音声ではけっこう聞いてましたが、生の動く David は初めて見るかもしれません。

40分あまりのこのビデオで David は本では読む事のできない「 GTD の哲学」について時間をかけて解説していて、見応えがありました。身振り手振りに 時には大げさな声をまじえて、まるでハイスクールの学生のようなひょうきんなプレゼンテーションなのも面白かったですが。

ビデオの中で David は GTD の考え方が東洋武術のような「即応力」にあると語っています。 たとえば武術の達人なら暗い路地で4人の暴漢に突然襲われても自分を守ることができるはずですが、それはどんなパンチを繰り出そうかと考えるよりも早く体が動いているから、つまり「型」が身についているからというわけです。

この比喩でいくなら、GTD は「考えるプロセス」を型にしたものなのだといえます。GTD は「何をすべきか」という疑問には答えを与えてくれません。むしろ、与えられたタスクに対して「何をすべきか」という判断をし、行動に落とし込むまでの最速のワークフローを提供しているととらえる事ができます。それはあたかも、空手のパンチの威力が筋肉の力(思考力)ではなく、速度から来るのに似ています(ビデオでは David の空手パンチが見れます)。

「GTD が本当に身に付いたなら、同じ事が2度気になっているようでは失格だよ」と冗談めかして語りながら David は頭の中にある「気になること」を信頼のおけるシステムに吐き出してしまうことの重要性を指摘しています。

「『気になること』は、信頼できるシステムに格納していない限りはいつまでも気になり続けるんだ。そのシステムを信頼しきれていないとき、人は『気にする』ことで忘れないようにしているといえる」

そこで信頼できるシステムを作って、細大漏らさず頭の中にある事を預けてしまわなければいけないわけですが、ここで 本でもでてこない一つのマトリクスが登場します。

gtd-matrix.jpg

横軸が「コントロール」つまりどれだけタスクを整理整頓しているかと示しており、縦軸は「パースペクティブ」あるいは視野の広さを示しています。

  • コントロールが少なくて、パースペクティブも少ない、左下の状態にある人は外からやってくる「気になること」に振り回されてばかりのひと。

  • コントロールばかり大きく、パースペクティブが少ない、右下の人は「マイクロマネージメント」つまりは細かい事ばかりが気になっているひと。大事なことをする前に机をきれいにせずにはおれないような状態です。

  • コントロールが小さく、パースペクティブが大きい、左上の人は「思いつきばかりで方向性の定まっていない人」といえます。考えばかりで、行動に落とし込めていない状態です。

  • コントロールとパースペクティブの両方が大きい、右上の人は GTD が軌道に乗っている状態で、最大もらさず大事なことがコントロールの下にあることを示しています。

大事なのは David Allen その人であっても常に右上の状態ではないということです。彼も常にこの4つの状態を揺れ動きながら毎日を過ごしているとビデオの中で話しています。GTD は失敗しやすく、復帰もしやすいということを念頭に、自分の状態をコントロールとパースペクティブの2軸で把握して「まてよ、今は些事にかまけ過ぎだ、ちょっとここでパースペクティブを広げよう」といった具合に調整を加えるのが重要というわけです。

書いてしまえば当たり前の事なのですが、こうして2軸に単純化して自分の生産性を自己診断するのはまさしく極意と言えるのかもしれません。

自分は現時点では左上の箱にいるというのが実感としてわかります。雑然としていた自分の OmniFocus のタスク一覧をリファクタリングするためのヒントを得た気がしますので、時間ができたらすぐに整理してコントロールをとりもどさないと。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。