一歩進んだライフハックへ (6) 自分を変える近道、I/Oマネージメント

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だまされたと思って1週間続けてみてください。いや、ダイエット商品のことではなくて、 あの騒々しい電気仕掛けの箱、テレビのことです。多忙なひとほど、ぜひ一週間テレビを消してみて不都合があるかどうか試してほしいのです。一週間たったころには、奇妙な開放感と、本を何冊も読む時間とともに「なんだ、見れなくて困ったのは天気予報くらいだな」と思うかもしません。

テレビだけではなく、どんな新聞を読んでいるか、どんな雑誌に目を通すのか、どんな本・映画・音楽を楽しんでいるのか、どんな人と言葉を交わすのか、どんな考えを自分に許しているのか、といった自分に対する情報入力のルートは、長期的にみたアウトプットのクオリティに大きな影響を及ぼします。

新しい年にむけた自分リファクタリングの第6のステップは、こうした Input / Output マネージメントについてです。

You are what you think about all day

英語の言い回しでとても好きなものに「You are what you think about all day」というのがあります。「自分というのは、自分が一日中考えていることにすぎない」というものです。テレビをみて「これ面白い」と思ったり、本を読んで「これは参考になる」と思ったりする、思考そのものが私自身なのだという意味です。

哲学的にも深遠な言葉ですが、実際的にも重要な意味があります。それは、私たちはいつも外にあるものに反応しているのですから、いつもみているものが馬鹿なテレビ番組だったり、つまらない本だったりすると、どうしてもそういう「枠組み」で考えるようになってしまうということなのです。

たとえば 「自分」という人間の特性は、一番親しい4、5人の人間のコンポジットで作られているといわれますし、その人がどういう本を読んでいるかを見ればその人となりがわかるというのとおなじことです。何を消費しているかは、どういう人間になるかを具体的に左右するのです

これを逆手にとりましょう。

自分を変えたいと思うときにまず最初に取りかかるべきなのは自分の考え方・マインドフレームであるのは当然なのですが、どこをどう変えればいいのかわからないのが普通です。現状の自分は、自分の欠点、ウィークポイントに対してたいてい盲目だからです。

そこで、今までの自分とは違う本を読んだり、違う映画や音楽を鑑賞したりするなど、違う情報の取り込み方を実践してみることで、自然と自分が思い描く方向に近づいてゆくことが可能になります。

インプット・マネージメント

みなさんは普通、どこから情報を入力していますか? テレビ、ラジオ、インターネットなど、いろいろあると思いますが、これを見直すことがインプット・マネージメントです。

  • テレビはそもそも見る必要があるか? 必要なニュースだけを RSS で抽出できないか?

  • 重複したニュースを、テレビ、新聞、RSS で読んでいないか?

  • 必要のないテレビ番組や雑誌を見ることが習慣化していないか?

  • 自分のゴールや価値観と照らし合わせて、見るべきでないけど習慣化しているものはないか?

ここで「くだらないテレビをみるな!」と書くのは簡単ですが、ときどき面白い番組に釘付けになってしまうのは誰だってあることです。問題なのはそれ自体が習慣化してしまっている場合です。年末に一度これまでの番組構成が改変されるのを機に、「これはただの惰性で見ているな」という番組は切り捨ててみるのもいいでしょう。

自分がふだん行っている情報入力の手段をならべたら、それらすべてについてどれくらい時間を消費しているか、インプットに対応したアウトプットの質を見直していきます。

アウトプット・マネージメント

インプットを多様にして、クオリティを高めると、自然とアウトプットも向上します。ブロガーだったら多分誰しもが知っていることですが、良質の情報をどこから入力するかが、アウトプットの質をある程度決定してゆくのです。

また、これもクリエイティブな職業についている人ならば誰もが知っていることだと思いますが、自分で考えたことを定期的に言葉にしてアウトプットするのは、いったん脳内に入った情報を整理するのに不可欠な作業です。自分はアーチストではないとおもっている人でも、なんらかの媒体に考えていることを書いてみることで、飛躍的に思考力や情報整理のちからが増すのを感じることができるでしょう。 しかしどんな情報をどんな形でアウトプットすればいいのでしょうか? ここで目的別にポリシーをつことが、アウトプット・マネージメントです。 私の場合は次のようになっています:

  • Moleskine 手帳:リアルタイムの考え事、忘れてはいけない記録、メモ、ノート、etc.

  • OmniFocus:すべてのタスクとプロジェクトの追跡

  • HipsterPDA: いずれ Inbox を経て OmniFocus に入ってゆくタスクの一時記録

  • 情報カード:アナログな情報蓄積。ワイン遍歴、本の引用文

  • Covey 手帳:決定した予定の蓄積場所。事務的な情報の一覧。

  • Lifehacking.jp :ライフハック関係で今日読んだ/考えた一番よいニュース/アイディアの蓄積場所。かならず自分の視点を加えない限り「投稿」はクリックしない。

  • その他テーマ別のノート: Lifehacking.jp 以外のテーマで書いていることの蓄積場所。文体、スタイルは Lifehacking.jp とほぼ同様

これをみて即座に反省したのは、自分の職業である研究用に毎日定常的にアウトプットをする場がないということです。研究論文をもっと量産したいと思っているのに、研究用のアイディア/草稿の蓄積場所がないのは不覚でした。 すぐにこれは改善したいなとおもった次第です。

ブログに書く情報、SNS で書く情報、Twitter に垂れ流す情報はそれぞれ向いている方向が違いますし、自ずと文体も質も違ったりします。

いままでメディアを享受する方向に偏っていた方は、ぜひ自分が**「どのような情報」を「どこから入手するか」に敏感になってみてください。次に、「得た情報をどこにアウトプットするか」について意識的になることによって、無駄な情報の流れを断ち切ったり、自分の仕事のアウトプットに必要な情報のインプットを逆算することが可能**になります。

さて、長かったこのシリーズも次で最後。最後は「戦略的忘却」についてです。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。