一歩進んだライフハックへ (5) 自分を狙いうつ習慣リボルバーを作る

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何度も繰り返しますが、「一歩進んだ」というのは「今の自分の状態よりも」ということで「他人よりも」ではありません。もはや、自分の頭の中で常々考えていたことを GTD ばりにブログに向けて吐き出している状態になりつつありますが、あと2回くらいおつきあいください。

Lifehacking.jp のミッションはなにか? と聞かれたら、それは「『自分を変える習慣作り』の探求」ということになります。ライフハックの目的と手段とは、ほとんどすべてこの「自分を変える習慣作り」でまとめてしまえる気がします。

でもかくいう私自身はなかなか習慣作りができない三日坊主の名人です。極端にいって三日以上続いたものといったら、このブログくらいのものでしょうか。

このブログを始めたのも、そんな自分を変えたいと願っていたからにほかなりません。10ヶ月続けてみて実感したのは、習慣形成には数の限定、場所と時間作り、そして定常的に試みるためのプログラムが必要だということです。

習慣カクテルは禁止

自分に自信がないせいなのだかわかりませんが、いろんな習慣を一度に定着させようとして、がんじがらめになってしまう傾向が自分にはあります。自分の中ではこれを「習慣カクテル」と呼んで禁止事項にしています。

たとえば最近、「毎日腕立て伏せ20〜30回」という習慣の定着に成功したのですが、それはもともと「毎日腕立て、腹筋、ストレッチをしよう」と考えて始めたものでした。体に関することですので3つを同時にやろうと企てたのですが、腹筋よりも腕立ての方がちょっとだけ手軽だという理由だけで、腕立てだけが定着してしまいました(おかげで腹筋はそのままなのに腕と胸の筋肉だけがつき始めて変なシルエットになってます)。

同時にいくつも習慣を追いかけるのが禁物なのは当然ですが、似たものを複数やるのもうまくいかない傾向にあるようです。腹筋は腹筋だけで、別にした方が実行回数が多くなってきている気がします。

新しい年に新しい習慣にいくつも挑戦したい気持ちは大事なのですが、ここはレーザーのように集約することでひとつずつクリアしていきましょう。そのためにも、

  • まずは習慣化したいと考えている こと全部のリストアップ

  • 自宅でできる、職場でできるなどのコンテキストの違いで分別

  • それぞれのコンテキストのなかで最も習慣化したいものの第1位を選ぶ

といった流れで集約化をしてしまうことが効果的なようです。

時間・ 場所を与える

いくら習慣が身に付かないからといって、歯を磨かないとか、お風呂に入らないという人は珍しいと思います。これも習慣といえば習慣ですが、毎日実行できる理由は、1) 必要不可欠なニーズであること、2) 時間がたいてい決まっている(お風呂はご飯のあととか、歯磨きは眠る前といったように)、の二つがあげられる思います。

この2は特に連想の心理トリックとして有効に使えます。たとえば私は腕立て伏せをかならず自分の書斎の床でやっていましたが、今ではこの床をみるだけで腕立て伏せを連想するようになってしまいました。また特定の習慣について時間と場所の両方を規定して、「帰宅してすぐ書斎で」、「お風呂前に寝床の上で」といった具合に、習慣に定位置を与えると定着率が高まる傾向にあるようです。

習慣リボルバー を作ろう

以前にも紹介したように、一つの習慣が身に付くまでにだいたい3週間が目安になります。とはいえ、人間ですから3週間でちゃんと身に付くとも限りません。こうしたときに、

  1. そのまま最初の習慣作りを継続する

  2. 次の習慣に移る

という判断に迫られます。ここは意見が分かれるところだと思うのですが、私は2の「次に進む」のが自分にとっては正解だと思っています。

アメリカ建国の父の一人、ベンジャミン・フランクリンは「節制」「倹約」「決断」といった13の徳目の実践方法について自伝で語っています。彼の場合、毎週1つの徳が特集となっていて、それを13週間でサイクルさせることで少なくとも1年 = 52週間に4回は一つの徳目を集中的に訓練することができるように工夫していました。

13も徳目があるのは実に清教徒らしい考え方ですが、私たちはコンテキストごとにせいぜい年に4つの重要な習慣を身につけられれば上出来ではないでしょうか。するとベンジャミンのサイクルをひっくりかえして、「4つの習慣 × 13週間」という風にプログラムをくむのも良さそうです。

**身につけたい少数の習慣を、まるで拳銃のリボルバーのように装填して1週間ごとに「撃ち」続ける手法を自分は「習慣リボルバー」と呼んでいます。**定着しても、しなくても、1週間ごとにその習慣を集中的に特訓しては次々に回転させてゆけば、たとえ定着しなくても一年間に一定回数はその習慣を実践できるようになるわけです。

頭の中の「変えたい自分」を狙いうつ習慣リボルバーを、来年に向けて作ってみるのはいかがでしょうか?

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。