The Now Habit (4) 遊びをスケジュールしよう:アンチ・スケジュール
The Now Habit が秀逸だと思うのは、私のようによく仕事をぐずぐずと先送りしてしまう人に対して「あなたは別にどこもおかしくないよ」「特に怠惰だったり不真面目なわけではなくて、ちょっとやりかたを変えれば人は誰でも能率を上げられる」「だから、自分のことを責めるのはやめて、充実した仕事と遊びの時間を計画してみよう」というポジティブなメッセージが随所に見られる点です。
仕事を先送りしているときは非常に罪悪感が強くなるものですが、まずはその罪悪感が静止摩擦に過ぎないんだということを気づかせてくれる本です。いつでも何かが軌道から外れてきたときに、この本を開くと助けになることが書いてあります。
今日はここまでの話を実践的なスケジュール管理術、アンチ・スケジュールにもっていく話です。
逆センスの心理学
仕事で大きなプロジェクトに取りかかると、すぐに「これは大きな仕事だから遊んでいるひまなんてない」「暇があればそれを全部仕事に投じなければ」という意識が強まります。
こうした心理的な無理は長く続くはずがありませんので、ゆくゆくは、いつになったら終わるかわからない仕事を目先の小さな遊びで先送りしたくなる欲求が強まります。
こうした「○時間以上仕事をしなければ」という方向に偏ってしまいがちな人間心理を逆に利用して、自分自身に次のような暗示をかけてみるテクニックが The Now Habit が提唱している逆センスの心理学です。目安にするならそれは、
-
どんなに仕事が忙しくても、一つのプロジェクトに週20時間以上従事してはいけない
-
また、一つのプロジェクトの仕事を一日5時間以上してはいけない
というルールです。
仕事をぐずぐずと先送りしている状態のときには一日5時間どころか週に5時間も仕事ができていないことだってあるのですから、普通だったら「遅れを取り戻すために1日10時間やりなさい!」と言われそうなものですが、それを逆に「どんなに仕事がのっていても一日5時間以上は禁止」と言ってるわけです。
どうしてこれが役に立つのかというと、放っておけば罪悪感も助けて際限なく仕事をしないといけない気がしてくる心理状態に、あえて天井を与えて「一日5時間もできればあっぱれだ」というルールを作り、「それだったら4,5時間くらいの仕事はしてみようか」と、逆にやる気を引き出してしまうというトリックだからです。
上の時間数は目安ですが、それを定量的にはかれるようにしてゆくのが、アンチ・スケジュールという手法です。
アンチ・スケジュールの方法
アンチ・スケジュール(元は unschedule)は、やらなくてはいけない仕事を次から次へと積み上げてゆく普通のスケジュール帳の使い方とは逆で、仕事に使えない時間、遊びの時間を先に記入して、残りの時間を有効に使う手法です。具体的には、
-
食事・睡眠・遊び・人と会う時間・健康管理の時間・通勤時間だけをスケジュールに入れます
-
30分の充実した仕事時間だけを、それが完了したあとで記入します。
-
仕事を先送りしがちな人は 30 分の短い時間を単位に、それを別のやりやすいタスクと入れ違いに配置します
-
毎日、そして一週間に完了した仕事時間を記録して、成果をつねにフィードバックします
-
週に1日はまるごと遊びのためにとっておきます
アンチ・スケジュールで最も大事なのは 1 のステップです。食事や通勤といった必要時間と、遊びの時間を色を付けて確保したあとの残り時間をみると、それが存外多くはないということがわかると思います。
週末に仕事をやるにしても使える時間は48時間がまるごとあるわけではなく、実際には12時間もあれば良いほうではないでしょうか。まずはこうした、時間に対する現実的な感覚を取り戻すことがアンチ・スケジュールの第一の狙いです。
残りの項目は、仕事と遊びを交互にいれることでペースを作るのと、充実した遊び時間が週末に確保してある安心を利用して30分単位で仕事をたぐり寄せるようにこなしていくための工夫です。
また著者によると、30分単位に仕事をするときに大事なのは常に新しいことをスタートする意識をもつことだそうです。「仕事を終わらせる」という意識はそれ自体がプレッシャーになりうるので、「仕上げ部分を始めよう」とか「最後の校正を始めよう」という具合に、スタートすることに集中をします。
また、遊ぶと決めた時間はかならず遊ぶようにすることも大切です。この遊びの時間が、残りの仕事時間のクオリティを支えているものですので、充実した遊び時間を確保して心理的に楽になりましょう。
原書のほうには実際の著者のクライアントの人が記入したアンチ・スケジュールなどが掲載されてます。例になりそうな週があったら、私もそのうち自分のをご紹介します。
明日は最後のまとめ、「ゾーン」の状態で仕事をする方法についてです。