夫婦仲をとりもつ3つの約束

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週末は親戚の結婚式に行っていましたが、堂々とした新郎新婦の様子に自分はどうだったっけ?と思うことしきりでした。自分が結婚したときは、引っ越しや式を挙げるまでの打ち合わせなどが大変だと思っていたものです。しかし実際には、相手と一緒に生活を始めて、慣れてゆく過程の方がずっと大変で、かつ楽しい時期でした。

私の場合、両親がキリスト教を信仰しており、自分も限りなくキリスト教に近い育ちでしたので、式はホテルでアルバイトをしている外国人の方ではなく、本物の牧師にお願いすることになりました。非常にまじめな牧師さんでしたので、結婚前に何度かお会いして親しくなる時間をかなり割いていただきました。

式の前の最後の打ち合わせで、この牧師さんが私たち二人に守ってもらいたい3つの約束について教えてくださいました。私の妻が主婦専業となることを念頭に語られたものだと思いますが、以下のようなものでした。

第一の約束は、夫が毎日奥さんに「きれいだね」「大好きだよ」「愛しているよ」と心を込めて言うこと。どれか一つではなくて、最低でもこの3つを一度は言うこと。妻は旦那さんに何か言いたい文句があったとしても、仕事から夫が帰り、着替えて食事をしてお茶を飲むころまで我慢すること。そこで初めて、ゆっくりと切り出すこと、というものでした。

第二の約束は、夫は時間通りに帰宅し、妻はおいしい夕食をつくること、でした。夕食に五分でも遅れれば食べごろを逸してしまうし、仕事帰りで疲れた夫には食事が何よりのほうびだという戒めです。

そして三番目。これが夫婦の間だけでなく、実生活でも役に立つものでした。

第三の約束

それは、どんなにケンカをしても、その日のうちに、どんなに夜遅くなってもいいので仲直りをしてから眠ること、というものでした。

案の定、新婚旅行から帰って一週間もたったころに、ささいなことで大げんかとなりました。数時間口も聞かずに別々の部屋に閉じこもっていたのですが、だんだん頭が落ち着いてきたころにこの約束を思い出し、そして嫌々ながらも奥さんのところに行って、向こうを向いてこちらを見ようともしない相手に長い長い話し合い(最初は一方的な独り言)を始めました。

へこたれそうになりましたが、なんとか仲直りをして眠りにつくことができたのは午前四時近く。ふらふらになって勤め先へと出かけていったのを覚えています。もしかすると、この約束は燃えている怒りを根気で消火するというものなのかもしれないな、と思ったものです。

**怒りを長続きさせることで怒りは失望になり、失望は相手に対する無関心につながる、この連鎖を最初の、最も修正しやすい段階で断ち切ってしまう点に、この第三の約束の良さがあります。**何時間でも話し合って仲直りだなんて、苦行のように見えますが、実は一番楽だったりするわけです。

この第三の約束だけは、結婚だけではなく、仕事の現場でも応用できるものでした。

この約束を意識してからは、コミュニケーション不足に起因するトラブルが生じた場合、なるべく早い段階で全員と顔を合わせ、自分が原因でない場合でも自発的に対処に乗り出すという習慣を作るようになりました。問題が生じていることを隠さずに、むしろはっきりと口に出して、早め早めに摘み取ったほうが後で楽だというわけです。目安としては48時間以内。なるべく、週末越えするトラブルがないように注意しています。

自分で気づいていないコミュニケーション不全だって多いのだから、気づいた分については早めに対応して損はありません。当然のことなのではありますが、意識化し、ルール化することによって大きなメリットが得られた習慣でした。

唯一の欠点は、これを実践する限り、亭主関白は望むべくもないという点でしょうか?

(update: 脱字を修正)

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。