WWDC 基調講演から推理できるさまざまなこと
寝不足です。ただでさえ忙しいのに無茶して基調講演をモニターするんじゃなかったです。
基調講演で発表された要点はさまざまなところで報道されていますので省略しますが(gizmodo, Macrumors, Lifehacker)、実のところどうなんでしょう? Mac OS X の次期バージョン Leopard を使ったら少しでも日常の仕事が楽になるのでしょうか?
キーノートの興奮が収まってみて考えると、目を引くような、あっと驚く新機能がないかわりに、今回のアップグレードは日常のちょっと面倒なフォルダ操作やバックアップの手間を短縮してくれる、なかなか気の利いたものがだったなというのが私の印象です。いくつか考えてみたことをまとめてみました。
Spotlight + Stacks + TimeMachine が実現するワークフロー
基調講演でも別々に紹介されているこの三つの機能ですが、検索の Spotlight、今回追加される Stacks と TimeMachine を組み合わせることで、これまでとは違ったファイルの整理方法が見えてきます。
それは今までのように「フォルダー/サブフォルダー」という具合にファイルをツリー状に整理するのではなく、次から次へとファイルを足していくだけでも、ユーザーがそれを利用するときの検索性 (Spotlight)、視認性 (Stacks)、安全性 (Time Machine)が保証されるというものです。
一部のアメリカのライフハック系の Podcast で「こんな機能は PathFinder に全部あるじゃないか!」という指摘がされていましたが、それは勘違いだと思います。ここでの目標はショートカットや Quicksilver を知り尽くしたライフハッカーの環境をより便利にすることではなくて、一般のユーザーが何も考えなくてもフォルダーが整理されてゆき、何もなくさないという安心感が保証される環境を作ることです。
そう考えると、この一見目立たない「新機能」の意味合いが見えてきます。特に Stacks は今までだって非常に便利だった反面、一般のユーザーにはあまり直感的ではなかったスマートフォルダの機能を、わかりやすく作り直したという印象があります。
ただ、この戦略の要になっているのは Spotlight の信頼性ですね。今のままでは、余計な情報が引っかかりすぎですので、もっとユーザーの視点から有用な情報がトップにくるように調整してもらいたいものです。
Back to my Mac の可能性
.Mac を通じて世界中のどこからでも自宅の Mac のファイルを共有できる Back to my Mac という新機能は、ネーミングからして GoToMyPCを意識しているのがわかります。
でも Back to my Mac はどうやら GoToMyPC と違ってリモートから自宅の Mac を操作できるということではなくて、今のところはファイル共有に限られているようです(多分。詳細は不明)。Remote Desktop のような VNC 機能が可能になるなら、これだけでも「買い」なのですが。
LAN 越しに Spotlight ができるとか、Time Machine のバックアップを無線 LAN 越しにできるなど、今回の発表にはなんだかユビキタス性を重視したものが多かったのが気になります。ここまでくると、一つの戦略があると考えない方がおかしいでしょう。
うわさになっているサブノートの存在や、iPhone などを足して考えると、いつでもどこでも何にでもアクセスできる環境を目指しているように見えます。Apple 流の、Web2.0 への返答でしょうか。
iPhone SDK を公開しない理由
Leopard からは話がずれますが、iPhone について。
キーノートでの「iPhone アプリの SDK は提供しないけれども、ウェブアプリとして作成するなら今日からでもできるよ」というジョブスの発言は集まった開発者を馬鹿にしていると憤慨している人もいます。私もそんな一人です。でも、Google Gears のようなテクノロジーの登場を考えると、もしかしたらその方が良いのかもしれないとも思えてきました。
Palm のように、Palm SDK にあまりに密着していて、その端末のうえでしか動かないアドレスブック・カレンダーソフト・メールソフトのクローンの乱立を許すよりも、開発者の意欲と焦点をユーザーが他人と相互作用する Web2.0 的アプリに向けることで、1) iPhone プラットフォーム自体がサードパーティーアプリによって脅かされない、2) 自分たちは Safari の開発だけしっかりやればよい、3) ユーザー同士のインタラクションを介して iPhone 自体がさらに売れてくれる、という一石三鳥を狙っているのではないでしょうか?
ここで要になるのは、iPhone 上でのサードパーティーアプリがオフラインでも使えるようにするための Google Gear のようなフレームワークを提供することができるかですね。