24時間でメール地獄から解放される方法
「週4時間しか働かない」 " The Four Hour Work Week" の著者 Tim Ferris は著書を上手にマーケティングする天才です。出版に先駆けた数週間で何人かのアルファブロガーを昼食に誘い出して、快活な人柄で自分自身と本とを売り込んだ結果、地球の反対側にいる私の RSS リーダーにも、ぜんぜん関係のない複数の情報ルートから彼の話が飛び込んできたのには驚きました。
Tim は起業家にしてプリンストン大学の客員講師。5カ国語を流暢に話し、世界中に散らばった企業を統括する経営者でありながら、タンゴの世界記録保持者でもあり、中国式キックボクシングのアメリカ代表、香港で人気テレビシリーズの俳優としても出演している、弱冠29歳の青年です。
最近彼のブログに、 「ロー・インフォメーション・ダイエット: 24時間でメール地獄から解放されて、仕事の能率を3倍に増やす方法」というチュートリアルが公開されています。
大量にやってくるメールにすべて応答するのではなく、無視すべきものを容赦なく無視することでメールに振り回されないスタイルを確立しようという実践的方法です。最近読んだものの中で一番刺激的、かつ、物議をかもしそうな内容でした。
ステップ1:メールチェックの回数は1日2回
まず彼が紹介しているのは、メールが届くたびに読むのではなく、メールをチェックするのは昼の 12 時と午後 4 時の2回だけと決めてしまうというテクニックです。一度にやることで、結果的にメール処理にあてる時間を減らすことができるというわけです。
非常に驚いたのは、Tim がこのルールを自分だけのものにせず、周囲に公言することをすすめている点です。周囲への認知をすすめることで、「なんで彼から返事が来ないんだろう。ああそうだ、彼は 12 時までメールを読まないんだっけ」と周囲の順応を促すのだということです。こうしたポリシーをたとえばメールで公表することをかれはすすめています:
皆様:
仕事の能率と効率をこれまで以上に向上させるために、私は今後メールのチェックを昼の12時と午後の4時の2回だけに制限するというポリシーを導入することにしました。
緊急の用件がある方はいつでも携帯 -* までご連絡ください。
この新しいポリシーのもとでも、顧客のニーズを満たし、我が社のブランドイメージを維持することに貢献する所存です。またこのポリシーによって、本来の業務に集中し、クリエイティブな仕事ができるよう努力するつもりです。
みなさんのご理解とご協力に感謝いたします。
ポイントは、「このポリシーは自分が時間管理のできない無能な人間だから導入するのではなく、むしろ逆で、時間をきちんと管理して貢献したいから行うのだ」という前向きなアピールをすることにあると Tim は書いています。
さすがに部内にこんなメールを送りつけるのはどうかと思う場合は、ふだんの会話でこのポリシーを根回しするのでも良さそうです。むしろその方が日本的?
ステップ2: メールの数をそもそも減らす
実際ありがちで無駄な「了解しました」メールのやりとりを減らすために、普段から相手との間でどんな場合にメールに返信をするのかルールを作っておくのが有効だというのが二つめのテクニック。これもやはり公言してゆくことで周囲との黙約が出来るので、彼はメールに:
届いたメールに質問事項などがない場合、私はメールに返事をしないことがあります。これは「了解しました」だけの無用なメールのやりとりを減らし、お互いの時間削減のためだとご理解ください。メールのやりとりについて確認等が必要な場合はいつでも携帯にお電話ください。
という一文を追伸で付け加えるそうです。これも勇気があるなあ、と感心します。また、場合によってはよく人気作家やブロガーなどが使う次の一文を付け加えるそうです。
メールをありがとうございます。私はすべてのメールに目を通してなるべく多くに返事をしようと心がけていますが、受け取るメールの量があまりに多いため、ときとして返信ができない場合がございます。ご理解とご協力に感謝いたします。
こうすることであとで返事を送るという自由を放棄しないまま、他人の都合でこづき回されて仕事をするのではなく、自分のペースを作るのだということです。
また、このように仕事の時間管理に気をつけているやつだという印象を与えるのも、場合によっては有利といえそうです(逆効果なことも多そうですが)。
使う場合は気をつけて….
彼はこの二つのテクニックの根底にあるのは**「選択的な無関心」**という考え方だと表現しています。つまりは応じる必要がなさそうな情報・メールは容赦なく切り捨てていくという考えかたです。これには二つのことが前提条件となっていて、
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目標を定めて、目標以外のものは雑音だという態度をとらなくては、目に映るすべてのものが重要な気がしてくる。それでは情報の取捨選択なんてできない
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すべての人を満足させようと思ってはいけない。それは自分が惨めになるための最短の道だ
という二つの考え方を受け入れなければ、ここまで思い切ったことはできないのだそうです。
さて、非常に刺激になったことはなったのですが、実際に上の文面のメールを部内にいきなり送ったら気が変になったのではないかと心配されそうなほどの思い切りの良さですね。職場のチームワークや、職種によってはそのままでは導入できない可能性が非常にありそうです。
ただ、こうした自分のポリシーに周囲を巻き込んでいくという考え方は非常に参考になります。偉そうでなく、狡そうにでもなく、誠心誠意でお互いの仕事の能率のためだという印象を相手に伝えることができるのなら、やってみる価値はありそうです。