仕事から無駄な漂流をしないようにアンカーを降ろす

anchor-card.jpg シゴタノ! 「『漂流』の流れ着く先に」で、仕事中の本筋からなんとなく離れていってしまうのを「漂流」と表現した上で、あえて漂流を許すゆとりを導入して創意工夫ができないかという記事が書かれていました。

関係のないウェブサイトで時間をつぶしてしまったり、Twitter をしすぎたりするような現実逃避は論外としても、仕事の情報収集の一環として RSS チェックや、ブログのチェックなどを業務として取り込んでしまうという逆の発想です。

心に残ったのはこの一言。

むしろスケジュールがかっちりと固まっているからこそ、「漂流」したい衝動に駆られる、ということもありえます。

これです。人間は「一番やらなきゃいけないこと」と「一番やりたいと思っていること」から全力で逃げる動物だというのをどこかで読んだことがありますが、この習性をよく理解して、自分のモチベーションを管理する必要があるなあ、と常に感じています。

仕事柄、情報収集が多い私はいつも一枚の名刺サイズの情報カードを使って「アンカー」を作っておくことにしています。簡単なハックですが、この自分ルールがいつも情報収集の時間を制限してくれています。

際限のない情報収集をやめる

インターネットは本当に無限の広がりをもっています。探そうと思えば、いつまでだって調べ物をしていることが可能です。A というテーマについて調べていたら A’ あるいは A’’ といった類似しているけどちょっとずれた論文をいくつもダウンロードして、結局読む暇がないということはよくあります。そこで情報収集の段階で先に決めておくルールとして:

  • 資料探しにかかる時間が30分

  • 資料の数が10件になった

どちらか早いほうでその日の資料探しは終了、ということに決めています。情報検索が非常に便利になった今、30分で見つからないものというのは、1. 存在しないか、あるいは 2. 探し方(キーワード)が絞り込めていないので見つからないのどちらかです。

重要なのは 1 であれ 2 であれ、現状の自分には見つけられないという点です。存在しない資料というのはそもそもありませんし、キーワードが絞り込めていないテーマというのは、たいてい視点や問題意識がまだ揺れているので「何を探しているのかわからない」という領域に片足を踏み込んでいます。

シゴタノ!で紹介されているように、微妙に関係しているものにも価値があったり、自分の見地を広げるヒントが隠されていたりしますので、心の琴線にふれるものを切り捨てるのはもったいないわけですが、だからといって際限のない資料探しも時間が過ぎれば過ぎるほど「ああ、また時間を無駄にした」という自責の念がつきまといます。

意味のない情報を集めすぎないためにも、この時間・個数の制限はわりと役に立つようです。

アンカーを降ろす

気の散りやすい自分にとってはやはり、いつのまにか全く関係のない資料あさりに没頭していたというのが一番ありがち、かつ非生産的な状態で、これをなんとか少なくしようとやっているのが、情報カードで「アンカーを降ろす」という習慣です。

船のアンカーはいったん降ろすと、それを中心に船が不動になるわけではなく、鎖にもたせた遊びの分だけ円を描きながら漂流できるようになります(でないとむしろ危険)。

単に名刺サイズの情報カードに「今調べていること」のキーワードを並べて書いておき、キーボードやモニターに挟んで常にそれをにらみながら資料集めを行います。このとき検索はこのキーワードの組み合わせ以外は行わないという束縛条件を加えることで、変な方向に行きづらいけれども、若干の遊びは残しておくことが可能になります。

カードで自分の行動をユルく制限するのはふだんもやっていて、昼休みに行く前に次の行動を「自分命令書」という形で机の上に残しておいたりしています。

簡単ですが、無軌道になりがちな行動にゆるやかな束縛をあたえてかえって効率を上げる手法の一つです。

読者のみなさんには何かこうした「漂流」を管理する普段の習慣はありますか?

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。