「なぜか仕事が速い人の習慣」(The 21 増刊号)

the21.gif を読みました。一流企業でばりばりと仕事をこなしている人々のアドバイスや、テクニックが紹介されていて非常に興味深い内容です。

全員のインタビューを総合してみると、いろんな共通点が見いだされてきます。私はふだんは研究者という、あまりビジネスとは関係しない仕事に就いていますが、応用できそうな考え方やテクニックがたくさんありました。

と同時に、随所で紹介されるようになった「ライフハック」の受容のされかたが、アメリカと日本ではいろいろ違うことにもあらためて気づかされました。

詳しくは雑誌を読んでいただくとして、インタビューされた人々の仕事術に見られた共通点と、感想についてまとめてみました。

仕事を加速させる実践的方法

雑誌の主な特集では15人のゲストのそれぞれの仕事に対する考え方と、仕事を加速させるための実践的な方法についてインタビューに基づいて紹介しています。読み込むと多くの共通点が見えてきます。

  • 締め切りを自分で決めて前倒しに実行すること:
    月末に締め切りが与えられているのなら、それ以前のタイミングに仕上げてしまうことを心がけることで、主体的に仕事を進め、かつ、時間というリソースにすきを作らない。

  • ライフワークバランスを自分で定め、無駄な残業よりも実質的な効果を追い求める:
    一日を仕事で埋めてしまうと新しい発想や、切り替えのための時間がなくなる。上の締め切りの原理と同じで、あえて仕事の時間を絞り込んでゆくことで時間対効果を最大にする。

  • 簡単な仕事からやるのではなく、重要度の高い効果の高い仕事を優先する:
    これはまさに「7つの習慣」の第三の習慣 “First things first” なわけですが、何を First と考えるかは状況によって、人によって必ずしも自明ではないようです。研ぎすまされた価値判断とバランス感覚が必要になるのが、この「重要事項」の見積もりだと言えそうです。

  • 事前のスケジューリングに時間を投資することで全体の効率アップを図ること:
    会合を行う前に議題を投げておく、一人でできる仕事は朝・夜・週末にする、常にスケジュール帳をみてタイムシェアリングできる点や近道はないか模索する。こうした効率化をはかるための時間投資を恐れない、というのも複数の人にみられた共通点でした。

個々のインタビューや特集記事などもなかなか魅力たっぷりですので、活発に働いている人の話を読んで参考にしたい人にはお勧めです。

ライフハック? ビジネスハック?

アメリカでライフハックが非常に有名になったのは、個性的なブロガーたちの存在によってでした。43Folders の Merlin などは「自分ほど整理整頓のできていない人間もいない。俺は仕事術のギークなのさ」といつも口にしています。

日本ではそれとは対照的に「ライフハック」が有名になると同時にビジネスでの応用がとくにフィーチャーされて、雑誌や本で紹介されることが多いようです。この雑誌でも2、3ページを割いて紹介されているライフハックは、Kinkless GTD や、Hipster PDA のような小さなツールよりも、Google ツールや使って仕事をするという面が強調される傾向にあるのも特徴だと思います。アメリカのギークたちが始めた流れが、日本のビジネスの現場を加速しつつあるのは、興味深く、頼もしいことです。2年前誰がここまで予想できたでしょう。

ただ、一介の仕事術ギークの私などは雑誌でフィーチャーされている人たちの肩書きと仕事量にちょっと圧倒されてしまいますので、失礼ながら顔と肩書きのところはポストイットで隠して読ませていただいてます。こうした方が「人」と「テクニック」の関連性をはぎ取って、テクニックの実効性を正確にはかりながら読めるので。これもライフハックと言っていいのかも?

*Update: (2007, 4/17)

紹介した雑誌はコンビニでふつうに売ってますが、もし手に入らない場合は(まだあるうちは) Amazon.co.jp で手に入るはずです。リンクを作っておきましたので、コンビニ・書店でみつからないという人はどうぞ。*

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。