ToDo リスト再考 (2) ToDo のアップデート

[image-action.png は簡単にまとめるなら、Inbox に入るべきものが ToDo の中に入っていてはいけないという話です。

Inbox は頭のなかの考え事を取り出しておくためのものですので、考えが深まっていない、モヤモヤとした状態の思考の断片が降り積もってゆくのは仕方がないのですが、ToDo リストはアクションを作り出してゆく「現場」なのですから、常にアップデートされた、その場に最適なものが入っている必要があります。

さて、ToDo リストに入れてはいけないものについて考えてみたので、今日はアップデートの仕方について読んだり考えたことをまとめてみました。

ToDo リストに忍び込む、じつは実行できないタスク

ToDo リストには、いま、ここで実行できる重要なタスクが入っているのが理想的ですが、実際はいつまでたっても実行できないタスクが混ざり込んでシステムによけいな負荷がかかりがちです。

その代表例として**「やる必要がなくなったタスク」「今はやるつもりがないタスク」「やりづらいタスク」**があるように思います。

実はやる必要がなくなったもの

書き込んだときは重要性が高かったのに、今は必要がなくなったタスクがこれにあたります。まあ、必要がなくなったのだから単に消せばいいように見えますが、それほど明快ではない場合が多いような気がします。

私の ToDo リストをざっとみてみたところ「教授のパソコンのハードディスクをデフラグする」というのがありました。教授が出張に行っている間に最近調子の悪いパソコンの調整をするつもりで ToDo リストに入れたのでしたが、実はその後、パソコンの管理者パスワードが変更されていてログインできないことが判明し、作業が止まっていたのでした。

こんな場合、状況が変わって、「今は完了できないタスク」に変化した時点でこのタスクはいったん ToDo から消し、後日仕切り直しをするべきだったのが、ToDo から消したら忘れてしまうのではないかという恐れから消せずに残ってしまったのでした。実行できないのに忘れられないという、まったく心理的にも無駄な、Unix でいうところのゾンビプロセスのようなタスクです。

これを防ぐには毎日 ToDo に向かったときに、シビアに一つ一つのタスクを「いま、ここでできるの?」という目で選別しつつ、今できないものは Tickler file 等を使って未来の自分に安心確実な方法で投げてしまう以外になさそうです。

今はやるつもりがないもの

これも困ったものです。他の人はどうかわかりませんが、私はよく ToDo リストのなかに「やるべきもの」ではなくて「時間があったらやりたいと思っているもの」という、似て異なるものを入れてしまい、結局仕事に集中できていないことがあります。

「やるべきもの」は今自分がコミットしないといけない仕事です。スティーブン・コヴィー流にいうなら「今着陸させようとしているコミットメント」ということになります。空港で離発着する飛行機は数多くありますが、どんなときでも離発着する飛行機は一機ずつです。でないと、衝突する危険があるからです。これと同じように、「やるべきもの」は常に一つだけに絞りこんでおくと効率が良くなります。

「時間があったらやりたいと思っていること」はそれとは微妙にずれているくせに、無視できない程度に重要なタスクだったりするので困ったことになります。たとえば勉強しておきたいスキルや、読んでおきたい参考文献などにあてる時間がこれにあたります。こうした活動は「7つの習慣」でいうところの「緊急ではなく、重要」という第2領域に該当することが多いので、これらを実行すること自体は非常に重要なのです。問題は、仕事が忙しくてこうしたものを差し挟んでいる場合ではないときにまで、ToDo にタスクがぶら下がっている状況です。

人にもよると思いますが、これを防ぐには今のコミットメントと、そういった将来への投資に向けた時間を峻別し、それぞれにコアタイムを与え、別々の ToDo で管理するのがよさそうです。こうした時間の峻別を 43folders では「時間のファイヤーウォール」などとも表現しています。重要な話なので、この「コアタイム」については後日あらためて考えてみようと思います(Lifehacking.jp の ToDo に記入済み)。

やりづらいもの

やらなきゃいけないと頭でわかってはいるのだけれども、(辛い|難しい|やる気が起きない)といった理由で実行できずにいるタスク。これも ToDo に数多く溜まる傾向にあります。

最近の私の ToDo には「歯医者の予約をする」というタスクがありましたが、これが心理的に大きなストレスで、なかなか実行できずにいました。

43folders で紹介されていた一つのテクニックですが、こうしたタスクを重要度の順番でやろうとするとかえって心理的に自分を追いつめてしまうので、あえて重要性をはぎ取って、タスクの頭文字のアルファベット順で強制的にやるという心理的なトリックも有効なように見えます。

歯医者の予約はこの方法でもうまくいってませんでした。たまたま気分が良い日に勢いでやってしまうまでは結局残ってしまいました。このあたりは、自分の内的なモチベーションを改善してゆく以外、有効な対策はなさそうですが、日々の ToDo を毎週レビューするときに、何が自分にとって「躓きの石」になっているのか、常にモニターする体勢をとることは重要な気がします。

いままで何となく作っていた ToDo リストの問題点がだんだん明らかになってきましたので、明日はコンテキストについてもう少し考えを進めて、新しい ToDo リストの作成を始めたいと思います。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。