Getting Things Done (a.k.a. GTD) part (3)

コンテキストというのは「文脈」という意味です。out of context というのは「文脈から外れた」という意味ですが、我々がたいてい仕事をこなすときにストレスを感じたりするのは、この、コンテキストから外れたアクションにせかされるからだといえます。

例えば報告書の例を思い出すと、報告書を提出しないといけないというストレスは、いいかえれば「今は書類を出せる状態ではない、先にやるべき作業がある、でもそれが片付かないのでストレスを感じている」と言い換えてもいいでしょう。つまり「書類」というものに付随した、「書く」、「チェックする」、「他の人と調整を行う」、「資料を集める」などといったアクションが完了しないと「提出する」というアクションができないわけで、そのことがストレスになっています。

コンテキストには時間、空間的なものもあって、書類を早く提出したいけど今は土曜日で事務室が閉まっているという場合は、そもそも、そのことを土曜日に思い出すのは無駄です。また、コンピューターの前でしか出来ない仕事を、バスの中で心配するのも無駄なことです。

こうした無駄は 100% なくすことはできませんが、すくなくともコンテキストにそってアクションを整理すれば、時間の能率化につながります。たとえば、車で外に出るときにやるべき、「外出アクションリスト」を作成しておけば、そこには仕事に関連した「A さんと会合」、「Bさんに挨拶」といったアクションの他に、「家族に頼まれた犬のえさを買っておく」、「旅行パンフレットを代理店で拾ってくる」といった封に、外出というコンテキストでできることがすべて書き込まれます。

来週行うもの、明日提出するもの、といった期限があるものは、日付の書かれたフォルダーにまるごと投げ込んで、朝一番にチェックするカレンダーに記入しておきます。で、記入した上で忘れてしまいます。明日の朝一番のカレンダーチェックをしたときに、そのアクションが不可避的に目に入るはずですので、こうした安心が可能なのです。

Tickler File

何かを忘れないようにするために、未来の自分に向けてメールを書いたりする人もいますが、書類をまるごと未来に向けて送信できたら良いとは思いませんか?

Tickler File

そうしたタイムマシンを擬似的に実現するのが Tickler File です。作り方は簡単で、個別フォルダーを 43 個用意して、以下の図のようにナンバリングします。43個のうち12個は1月から12月のためのものですので、山の場所が違ったり、ちょっと高いものを使うと効果的です。

43個のフォルダのうち、12個には1月から12月と書き込み、残りには1日から31日と順番に記入します。次に、今日が5月28日だとするなら、29、30、31日のフォルダを一番手前に置き、そのあとに「5月」そのあとに1日から28日のフォルダ、そしてそれ以降には6月から12月のフォルダを並べます。

もし、来月の6月2日に提出する書類があるなら、6月のフォルダの手前にある「2日」というところに書類を差し込み、カレンダーや Palm にそのアクションを記入した上で忘れてしまいます。毎日、朝一番のチェックのときには、最も手前のフォルダを開いて、そこに入っている書類を一つ一つ片付けます、そしてそのフォルダは次の月の最後尾にまわします。

こうすることで、とりあえず来月までは1日単位で、それより先については1ヶ月単位で書類をまるで私書箱に預けるようにして格納することができます。 もしこのフォルダに収まらないような大量の書類を先送りにしないといけない場合は、そうした書類の存在を示すカードを作成して Tickler File に入れ、実際の資料は見つけやすい、でも安心して忘れている事のできる場所に封印します。

ただしこの方法は毎日朝一番の GTD スキャンをすることが前提となっています。これを忘れてしまうと、システムそのものへの信頼が薄れ、いずれまた頭の記憶で約束事を覚えるように逆戻りしてしまいます。

こうしたことを防ぐためにも、次の Weekly Review / Daily Review が不可欠になります。これについては、また次回

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。