なぜもっとスマートなタスク管理アプリが生まれないのか?

忙しい人は、その忙しさが人生を押しつぶしてしまわないように、なんらかの仕組みを作っています。やるべきことを紙にかきこむ、手帳にかきこむ、Todoリストを管理するアプリに入力するなどのように、その忙しさを頭の中から一時的に追い出すのです。

でも、と Wired の David Pierce 氏のちょっと刺激的なタイトルの記事は異議をとなえます。なぜ2016年にもなろうという今でも、仕事を楽にしてくれる、満足のゆくタスク管理アプリはないのだろうか?

It’s 2016. Why Can’t Anyone Make a Decent Freaking To-Do App? | Wired

リストを作ることは大変だ

氏は、既存の Todo 管理サービス、たとえば Todoist や、OmniFocus や、Remember The Milk などに本質的な不満があるわけではありません。機能は十分ですし、とても使いやすい。でも、それらは本当に忙しさを楽にしてくれているだろうか? というのが彼の主張です。

その一つの理由として、タスク管理が有用であるためにはそれを信頼して依存できるほどに頭のなかの全てのタスクが書き込まれている必要があるのに、そこまで入力するのがとても手間で大変だというのがあります。

“Input and output is too hard.” That’s one reason pen and paper remain so popular. Jotting things down is faster, easier, and better for cognition. A to-do list must be fast and flexible enough to keep up with your thoughts.

「入力と出力は難しい」それこそが、手がきのペンと紙が依然として人気である理由だ。紙に書くのは多くの場合より速く、簡単で、認知的にも良い影響がある。Todo リストは、あなたが想起するスピードに合うくらいに速く、柔軟でなければいけないのだ。

つまり、タスク管理アプリの有用さはいくら GTD (Getting Things Done)に準拠しているかでも、スマートフォルダやタグの機能がそろっているかでもなく、必要なリストをいかにすばやく作って、いかにすばやく消せるかにかかっているのです。これが単になんのアプリも使っていないときに比べて速く、気持ちが楽でなければアウトというわけです。

ツールの入力をみなおしてみる

Todoist や OmniFocus のように、気に入っているタスク管理アプリがあるようなら、それを維持するためにかかっている時間と、節約できた時間を比べてみてください。もし維持するための時間がかかりすぎていて、それがツールを使うことで気が楽になるという以上にメリットがないなら、多少見なおす必要があります。

一つ目は入力です。

最もすばやい入力方法をつかっているだろうか? という視点でタスク管理アプリを見直すことができます。Todoist については、先日クリック入力の機能が大幅に改善されていますので、この機能をちゃんと使いこなしているかは復習しておきましょう。意外にここで、クリックを一つ、二つと節約できる可能性があります。

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もう一つは、テンプレートのような機能です。あらかじめタスクが決められたチェックリストのようになっているなら、それを一つ一つ手で入れるよりも、さっと読み込ませて仕事にとりかかったほうがほうがよいでしょう。

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OmniFocus などでは、テキストファイルをクリップボードからペーストするだけでタスクのリストができますので、似たようなことは実現できます。

ツールの出力をみなおしてみる

さて、すばやくリストを作ったとして、それをいちいちみないといけないという手間もあります。ここでも一工夫ができます。なるべく多くのタスクが向こうから通知でやってくるようにしておいて、スマートフォンのようなデバイスや、スマートウォッチ上で確認することです。

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これに関しては、私は Todoist の位置情報に基づいたタスク通知がとても気に入っていて、場所に到着、出発した場合に Apple Watch に通知がやってきますので、そこでタスクを思い出すことができます。

未来はどうなる? 自動的につくられるリストと通知

記事中では、タスク管理アプリの未来についても触れています。たとえば Google がなぜタスク管理アプリを作らないかというと、すでに Gmail や Google カレンダーといったピースを所有しているので、個別にタスク管理アプリを作るよりも、メールのなかにあるタスクを自動的に検知してカレンダーに登録したり、通知するほうがよいと思っているからです。

これはまだ発展途上ですが、メールのホテル予約が自動的にカレンダーに追加されるのにも最近は慣れてきましたね。

もう一つは、自動的に作られる Todo リストです。ここでは Todoist のCEO、Amir が登場してコメントをしています。

Amir Salihefendic, the founder and CEO of Todoist, has a similar vision to Google’s. As part of a recent redesign, his team looked into building a machine learning algorithm that could determine how you live and seamlessly integrate your to-do list. It would even recommend the best day to accomplish a given task.

Todoist CEO の Amir SalihefendicはGoogleのそれに似たビジョンをもっている。最近のアップデートで、彼のチームはユーザーの行動や、タスクを実行しがちな時間帯を機械学習で学び、それに基いて Todo の項目をもっとも良い時間に通知する仕組みを開発している。

「人の日常はわりあい繰り返しが多いので、予想がたてられる」という Amir は、ゆくゆくは勝手に必要な Todo が登録されて、ユーザーである我々の注意をうながし、自然に消えてゆく仕組みも考えているようです。

これまではいくらスマートフォンが高機能になり、クラウド技術が発展したといっても、けっきょくはタスク管理アプリをいじくる時間はあまりかわりませんでした。

しかし IoT 的な技術が浸透してきたら、我々の環境から勝手アプリが Todo を拾ってそれを実行するようにうながしてゆく仕組みもできるのかもしれません。

タスク管理アプリの次なる進化の入り口に私たちは立っているのかもしれません。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。