GTDのデビッド・アレンさんの空手パンチも見所のTEDx 講演動画

ストレスフリーの仕事術、「Getting Things Done」の提唱者 David Allen さんの TEDxClaremontCollages での講演が公開されており、通常のビジネス的な講演よりも一般向けのスライドになっていて見やすくなっています。

「GTD は格闘技だ」というデビッド・アレンさんの空手パンチも見ることができますし(6:35付近)、全体がよくまとまったGTDのイントロダクションになっていますので、知っている人にもよい復習になることでしょう。### awkwardness と engagement

動画の冒頭でアレンさんは昔サンタクルス島の付近で船を停泊していたときの話題から語り起こします。

錨が流れてしまい、折からの陸風に吹かれてみるみるうちに低気圧の影響でうねりの激しい海に吸い込まれそうになって緊張している一瞬、頭上を仰ぐと見たこともないような美しい満月がでていたのだといいます。

「緊張のさなかに一瞬生まれる静寂を誰もが感じたことがあると思う。それが、その瞬間に生きているという証なんだ」

GTDはそれと似たように、さまざまな乱雑な仕事や出来事が次々とやってくるなかで、一瞬の静けさを取り戻すための方法なのだとアレンさんは強調します。

そのためにまず必要なのは、頭のなかに生じた『これをしなければ』『これをやろう』という思いをすべて書き出してしまうことです。しかしこれは最初はあまりに慣れない手続きなので awkward = きまりが悪い感じがするのです。

この「きまりの悪い感じ」を何百回と繰り返したところに、正確に繰り出すことができるGTDのパンチがあるというわけです。

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残りの講演はGTDの基礎についてのまとめになりますが、ここでよくでてくるもうひとつの単語が engagement です。

この単語も、日本では「エンゲージ」が「婚約」という意味で広まりすぎているので翻訳しづらいかもしれませんが、本来は「注意を引く」「関わる」あるいは「交戦する」という意味合いになります。

つまり急な仕事や、降って湧いた出来事に対して、どのように engage するかというところに、ストレスを最小限にする秘密が隠れているわけです。

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面白いのは、アレンさんの今回の講演にはツールの話が一切出てこないという点です。

GTDの話題はどうしてもそれを実現するツールという部分に吸い寄せられがちなのですが、実のところは紙とペンがあれば十分だというのは大事なポイントです。

「ストレスフリーの仕事術」というのは、GTDを身につけてパワーアップした人が手に入れるスキルというよりも、1. 物事を頭の外に追い出して余裕が生まれた人が、2. やってきた仕事に適切に最初のアクションを決められる、という「状態」のことを指しています。

GTDという形式を利用せずとも、この awkwardness をものにして、engagement を意識している状態であれば、忙中閑ありの状態は作れる。それがアレンさんの真髄なのでしょう。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。