1時間に一度更新して、時間そのものを表現するウェブコミック "Time"

Time

「次に何が起こるの?」「待っていればいい」

先日も紹介した棒人間コミックxkcdで、1時間に一度だけ更新される不思議なウェブコミック “Time” が現在も進行中です。

“Time” は当初、Megan と Cueball という、彼のコミックではお馴染みのカップルが海岸にいるところだけが描かれており、他には何の説明もなくタイトルには「Wait for it」(待て)とだけ表示がありました。

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この最初のフレームが2013年3月25日です。

ほとんどの人はなんのことかわからず、そのページから移動してしまったかもしれません。しかしほんの30分待ったところから、ドラマが開始します。それは時間そのものを題材にした長大な作品だったのです。### 1時間に一回更新

何の説明もなく、30分後にこのページをリロードした人もほとんど変化には気づかなかったかもしれません。しかし1時間、2時間と時間がたつにつれて微妙な変化がページ生まれ始めます。

二人が寝転び、そのうち時間に飽きたのか砂の城を作り始めます。そして少しずつ、少しずつ、時間とともにアップデートされてゆくフレームのなかで大きな砂の城がその姿を現し始めます。

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最初は30分に一度だった更新はやがて1時間に一度となり、続きを知るためにはさらに長い時間がかかるようになります。

このあたりで xkcd ファンの間ではすべてのフレームを保存し、出来事の時系列を作る動きも始まりました。

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その間にも、忠実に、一時間に一度、フレームは更新し続けます。

右のほうにあるはずの海が次第に満ちてきているというセリフが入ります。左の方には川がありますが、まだ海にたどり着いていません。

やがて二人はこの海がどうして満ちるのか、川が流れ込んでいるのか、雨が降っているのだろうかと不思議に駆られ、作り上げた砂の城をあとにして歩き去ります。

満ちてくる潮のなか、砂の城が少しずつ崩れる様子も、1時間に1フレームだけです。

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現時点でこのウェブコミックの掲載日数は44日間、フレームの数は1122コマで、二人の旅はまだまだ終わっていません。

その間にも、このコミックは次第に注目を集め、Economistに注目され、長い時間のプロジェクトを推奨するLong Now Foundationにも言及され、静かな反響を呼んでいます。

しかし作者自身は、このウェブコミックのアーカイブも作っていませんし、更新がどこに向かっているのかも、最後まで見た結果何か意味があるのか、一切言及していません。

そう、「待つこと」だけがこの作品のすべてであると言わんばかりです。

時間、意味、帰結

まだ未完のこのウェブコミックに対して現時点で何かの結論を見出すことは不可能です。

何かの意味があるのかもしれませんし、結局は意味が無いのかもしれません。最後は最初のフレームに循環するのかもしれませんし、違うのかもしれません。

私たちは早急に「これはどのような意味あるのか」「結論は何か」「結局どうなるのか」と、何かにつけて意味を求めすぎるきらいがあります。

しかし人生がそうであるように、時間の流れが向かうところにはあらかじめ意味を見出すことはできませんし、帰結を先取りすることも、最終的な意味の有無を保証することもできません。

ただ忍耐強く待つこと、期待しながら待つこと。それをこのウェブコミックは今も教えてくれているのです。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。