「意志の力」を鍛えるには、どんな人でもクリアできる極小の習慣から

Power

意志の力は筋肉のように鍛えることができるのでしょうか? それともそれは持って生まれたもので、なかなか変えることができないのでしょうか?

ソーシャルメディアへの時間差投稿を可能にする Buffer のサイトにはこれまた興味深いブログがあるのですが、そこでこの問題について研究した例を紹介しています。###

紹介されているのはオーストラリアの研究者 Megan Oaten と Ken Cheng の成果で、最初の研究は被験者に運動を続けてもらって、それが「意志の力」を代表させる作業に与える影響を測ったものです。

Fig1

運動をはじめて1ヶ月、2ヶ月たった時点で、被験者は単純な作業を行うテストをうけます。ここで「意志の力」に負荷を与えるために、被験者はある考えを抱かないようにという指示を与えられます。作業と関係のない指示を与えることで、作業の間違いを誘発させたわけです。

結果は、もちろん「意志の力」に負荷を与えた場合のほうが作業の間違い率が高くなるのですが、面白いことに運動を継続した時間が長いほど、間違う割合は減っていきます。運動を継続した人は、意志の力も増していたのです。

ただ、面白くなるのはここからです。

これらの人々に、「タバコをすった本数」や「テレビを視聴した時間」などといったような意志の力を使うできごとについて質問をしてみると、系統的に運動を続けていた人のほうがタバコを減らし、テレビの時間を少なくするなど、意志の力を強めるのに成功していました。

Fig2

しかしこれでは「運動」という、意志の力を必要とする条件が「意志の強い人」を選別したという当たり前の結果という可能性もあります。

そこで二人の研究者はさらに別の習慣でも似たような影響が生まれるかどうかを調査しました。

たとえば家計をつけるように求められたグループ、勉強のスキルを高めるために練習することを求められたグループなど、さまざまな習慣によって先ほどの結果が得られるのかを試したところ、やはり「何かを継続しているひと」は、系統的にタバコの本数を減らしたりといった悪習慣から脱することができていたのです。

極小の習慣からはじめる

元記事では、いくつか実生活で役に立つ結論をここから導いています。ひとつは、「意志の力」というものはもともとが弱い状態から始まっているので気にしないほうがいいという点です。

むしろ意思を発揮しやすいように、意志力を必要とする作業を精神力の充実した午前に動かすなどの工夫をすることが大前提となります。

また、どんな小さな習慣でもいいので、何かを継続すると意志の力も次第に強まるという点も重要です。

小さな習慣というのは、単に歯磨きレベルでもいいので、何か小さなコントロールの及ぶものを人生に取り入れると、それが全体に波及してゆくというわけです。

これは私自身の経験にも合致しています。何かが思い通りにいかずに「なんて自分は意思が弱いのだろう!」と苦しんでいるときは、案外小さなことを取りこぼしがちです。

しかし小さな約束事でいいので何度か守るようにすると(それはメールの返信や挨拶程度でいいのですが)、次第に意思の制御の感覚が取り戻せてきます。

ほんの小さな習慣を小石のように積み始める。でもその影は長く、生活全体へと伸びてゆくのです。

みなさんはいかがでしょう? どんな小さな習慣を追加してみますか?

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。