アイデアを実現させる3つの原則 Scott Belsky 基調講演 #WDS

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「クリエイティブ」さは、過大評価されています。

クリエイティブであればなにかすばらしい本が書けたり、製品が作れたり、ビジョンを実現できると私たちは考えがちです。そしていかにして「クリエイティブ」になれるかという情報がやりとりされます。

しかしクリエイティブさは、実際には火花に過ぎません。その火花が炎となって世界をのみこむためには、それを実現させるプロセスが不可欠です。

アイデアの99% 」の著者、Scott Belsky さんの講演では、そのようにアイデアを実現に至らせるために必要なものが紹介されました。### 最初の熱が醒めてしまう

誰もが、すばらしいアイデアを思いつきます。しかしその多くは実現しません。

それはなぜかというと、最初にアイデアが生じたその次の日、次の次の日になるにしたがって、アイデアが生まれた瞬間の熱がしだいに普段の生活の雑事によってかき消されてゆくからです。

Scottさんは面白そうにいいます。「こうしたとき私たちはどうするかって? そう、新しいアイデアを思いつくのさ」

Plateau

このように、実現しないままに醒めてしまうアイデアの連続のなかに、多くの人がとらわれているわけです。

それを乗り越えて、熱を冷まさないようにするためには、単にやる気や情熱というだけでなく、アイデアが実現しやすい環境をつくらなければいけません。それを Scott さんは3つのポイントとしてまとめます。

1. 「反応的」なワークフローをやめる

多くの場合、私たちが「忙しい」と称しているのは「誰かのメールへの返事を考えている」「誰かのスケジュールにあわせている」といったように、何か外からくるものに対してリアクションを起こすことばかりです。

そしてこうした、「反応」を迫るものが多いのが最近の世界です。メール、電話、Facebook、ツイッター、RSS、携帯電話…。どれもアクティブというよりも、外からの情報にリアクションを起こすだけのものです。

これを乗り越えるには、Scott が「Window of Non-Stimulation」と呼ぶ、外からの刺激がない聖域時間を作ることが必要です。

反応しなくてもよい、主体的な時間を確保することで、私たちは自分たちのアイデア、自分たちに大切な考えに集中することができます。

2. アクションに根ざして生活する

1時間のミーティングをしたとしても、何も「行動 = アクション」が定まらなければそれはメールで済む話といえます。

アイデアを実現に至らせる人の特徴として、常にアクションに根ざして生活を整理している傾向があるのだそうです。

ちょっとしたミーティングでも、それを「では○○日までに△△をする」といったアクションを収集するステップとして考えるわけです。

クリエイティブさは、なんだか脳内で起こるすばらしいできごとのように思いがちですが、それをこうしたアクションという動詞の形で実装できる人こそが真の意味でクリエイティブなのでしょうね。

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3. アクションを実現するチームを作る

一人で実現するアイデアもあるでしょう。しかし多くの場合は、チームワークでアイデアは実装されます。そのときに重要ないくつな側面についても Scott さんは指摘します。

まず、チーム内の Dreamer(夢想家)、Doers(実践家)、Incrementalist(推進派)を意識して配置することです。Dreamerはアイデアを常に算出します。たとえ締め切り直前でも、「ここはこうしたらどうか?」というアイデアを出します。それを外に出すことが、彼らの持ち味です。

一方Doerはその夢想につきあうことなくアイデアを実現するために行動します。彼らはタスクリストが空になることを最善の状態としていて、プロジェクトを前に進めます。

Incrementalistはこの両者の両方の資質をもっていて、一見とても良いことに思えますが、実際にはやることが多すぎるという罠に陥りがちです。実際には、この三者がいることを意識して、Dreamers/Doersのアクションのバランスをとります。

このとき、それぞれをチームに対する免疫システムだと考えるとわかりやすいでしょう。アイデアを実現しているときは Doersを優先して、新しいアイデアは抑制すべきです。でも新しい製品を考えているときは、Doerを抑制してDreamerに手綱を渡すべきです。片方は、もう片方の役割を上手に演じられないということでもあります。

失敗のイメージから自分をシールドする

こうした考え方は結局のところ、「こんなこと本当にできるのだろうか?」「自信がない」といった、アイデアを停止してしまう心理的なバリアーにたいして自分をシールドする役割をもっています。

他にもさまざまな開発の現場で意識的に行われている「小さなイテレーションで開発する」「時間を制限してダッシュで開発する」といった習慣も、結局の所は疑いが生じたり、熱意が醒めるのを遅らせる意味があります。

この講演、面白かったのは曖昧な「クリエイティブになろう」という言葉や、変に「やる気」に依存するメソッドもなかった点です。

アイデアを実現させるもの、それは熱意の火花を絶やさない堅実なアクションの連続なのだということです。

Scott Belskyさんの講演の骨子は以下の本でも読むことができます。また、彼属する Behance ではこの考え方に根ざしたタスク管理アプリ、Action Method も開発しています。興味があったらお試しください。

アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力

[ Action Method App

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それにしても著者の名前より、帯の佐藤可士和さんの名前の方が大きい現象には名前をつけたい…。

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堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。