スティーブ・ジョブスになれなくても実践できる一つの習慣

Liberal

とりあえず最初に認めなくてはいけないのは、あなたがスティーブ・ジョブスではないということです(もしそうなら、こんにちはスティーブ)。

それでも数々のヒット商品を生み出し、アップルをここまでの巨大企業に成長させたスティーブ・ジョブスの思考法や、イノベーションにむけた考え方から学べることがあればと多くの人が思っているはずです。

今回、日経BP社から献本していただいた「スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション 」は「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン 」の続編で、今度はスティーブ・ジョブスを彼ならしめている思考法に迫っています。

ここでやはり読者として気になるのは、スティーブ・ジョブスの成功はあの特異な才能と性格、そして時代の追い風があったからであって、本の形で他の人には伝えるべきノウハウなど存在しないのでは? という点でしょう。

実は人間臭い7つの法則

著者のカーマイン・ガロは本書を書くにあたって明らかにこの点を意識していた節があります。すでに伝説的なジョブスやアップルのさまざまなエピソードを紹介して読み物として楽しくしながらも、そこから他の人にも適用可能な法則を探し求めていきます。

本書の中でそれは「7つの法則」としてまとめられていて、たとえば「大好きなことをする」「めちゃめちゃすごい体験を作る」といったように多少曖昧なことばで切り取っていきます。

あえて曖昧な法則になっているのは、スティーブ・ジョブスの半生と照らし合わせて、読者にもこの法則を意識する瞬間があったのではないか? と共感を生み出すためなのでしょう。各章の最後ではそれをあらためて読者に意識してもらうために、いくつかの設問が用意されています。

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そう、スティーブとて人間なのです。私はこの本を読んで、失礼ながらこれまで超越した感じがしたスティーブの、実は人間臭い欠点の多い魅力にあらためて魅せられました。そしてそれぞれの法則が、実はふだんから私たちの生活をちょっとずつ良くしている習慣と相通じているんだなということを意識して心が楽になりました。

特に読んでいただきたいのが10章の**「1000ものことにノーという」**のくだりです。間違った方向に進まないために、部下たちが目指すべき方向に集中できるように、どれだけのことに「ノー」と言わなければいけないか、どれだけの無駄を省いて洗練を求めなければいけないかがまとめられています。

ほかの法則にくらべて、この「ノーという習慣」は、すぐにでも実践できる唯一の習慣ですが、それゆえに最も難しいものでもあります。アップルのすべての製品はこの法則から生まれたといっても過言ではないからです。

あなたはスティーブ・ジョブスではありません。

でも彼を成り立たせている思考方法や、イノベーションへの考え方はそれほど異質なものではありません。本書は「人間」スティーブの思考に迫りながら、私たちが自分自身の中のスティーブ・ジョブスを見つけ出す手伝いをしてくれます。

もし書店でお見かけの際は手にとってみてください!

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。