今こそ時間の「貧困」から解放されよう

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今日は Blog Action Day です。世界中のブログが、一つのテーマで、同じ日に投稿をするという取り組み、その2年目のテーマは「貧困」です。

Blog Action Day のテーマは、それぞれのブログがそれぞれの視点から書いてよいので、自分も Lifehacking.jp のテーマから「貧困」について考えてみました。現実の貧困と双対するようにして豊かに暮らしている私たちを蝕んでいるもう一つの「貧困」、「時間の貧困」について書きたくなりました。

先進国にすんでいる私たちの多くには現実感がない「貧困」という言葉ですが、誰もがいま自由意志に反して搾取されて、しかもその状態に甘んじることさえしているものがあると言ったら信じてもらえるでしょうか?

「時間の貧困」というのは、単に忙しいというよりも根が深いものだと私は考えています。今日はそんな話について。そして Lifehacking.jp の新たなコミットメントについても末尾に書きました。

「豊かな時間」は「能動的な時間」

世界の水準からいって並以上の豊かさを享受している日本の私たちにとって一番「貧しい」もの、それは時間なのではないかと、私はよく思います。

そんな考えになった一つのきっかけは、ローマ皇帝であり哲学者だったマルクス・アウレーリウスが「自省録」のなかで語った言葉、**「君は受動的に経験するために生まれてきたのか。それとも行動するために生まれてきたのか」**というものでした。

腑に落ちないままこの言葉をよく読んでいたあるとき、「ああ! 受動的な経験 = お金で手に入れられる体験や物自体に意味があるのではない!」「豊かさから得られる物などはあくまで手段で、自分の行動で実現できることに意味があるのか!」といいたいのだなと思い当たったのです。

しかし今という時代は、この「受動的な行動」がものすごい勢いでふくれあがっている時代でもあります。薄っぺらいテレビ番組や、価値を一切不可することのないつまらない雑誌、そしてただひたすら自己増殖してゆくニュースサイトやブログ。「世の中についていかなければ」という強迫観念だけでこうしたメディアに奪われてゆく時間は殺人的とさえいえます。

私たちが何かを「実現」する「能動的な時間」を減らしている、こうした「受動的な時間」をなるべく減らすことが、一人一人の幸せにつながること、ひいては国全体の意識改革に、世界全体の進歩に役立つのだと私は本気で考えています。

逆に時間を奪われたまま過ごすことは、自分のための内省の時間を失うこと、自分を失うこと、他人とつきあう時間を失うこと、他人への寛容を失うこと、私たちの良心をうしなうことなのではないか? それは私が危惧していることなのです。

能動的時間へのチャレンジ

自分もよく後ろ向きになったり、流されていいるときがあるので自分に対する戒めでもあるのですが、次のような「時間貧乏」を脱するマインドセットを心がけるよう、読んでくださっているみなさんをお誘いしたいと思います。

  • **「いま自分は何をしているんだ? それは自分で選んだことか?」**という質問を出来る限り繰り返す。「今」を意識できることが、とりもなおさず失われてゆく時間を取り戻す一歩だからです。

  • 読書なら、「これをどのように役立てたり、自分の成長に活かそう」という攻めの読書を。テレビなら、「この番組をみるのは 10 秒で Google するよりも情報量が多いのか」と、時間あたりに受け取る情報に意識的になる。

  • テレビ、ラジオ、雑誌、マンガ、インターネット、動画サイト、ニュースサイト、ブログ、SNS、Twitter、FriendFeed に対して、アクティブな利用ができないものは、「無駄な受動的活動」と割り切ってダイエットしてしまう

  • それでもそうした余暇の活動をするときには、「自分はこれを選びとっている」「自分はいま自分の意志で、リラックスするためにこれをしている」と、心のどこかで付け加える。

ブロガーの方にぜひすすめたいのが、「一つ付け加える」という習慣です。Lifehacking.jp の記事ではよく、海外のブログで紹介されていたものを意訳し、さらに「+アルファ」を付け加えることをしています。これは元記事を書いた著者への感謝と尊敬を込めて、「もう一歩」話題を前進させるためにしていることです。

今話題になっていることをただ右から左にコピーしてゆくのは、たとえブログを書いていても「受動的」な気がしています。そこに「自分」が一行でいいので加わった瞬間、その一行を作るために頭を働かせた一瞬は「能動的時間」となるのです。

「個性をはぎ取られる」のではなくて、「個性を生み出してゆく」瞬間。情報に振り回されるのではなくて、情報を生み出した瞬間。こうした時間は、少しずつ降り積もってゆくことで、大きな豊かさが生まれると私は確信しています。それこそがこのブログのテーマ**「自分を変える、小さな習慣」をつくり出すビルディング・ブロックなのです**。

現実の「貧困」へのコミットメント

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言い尽くされている感じもしますが、現実の「貧困」も、我らが隣人に対する想像力の欠如から生じている部分が多い気がしています。そして**「自分の力でできること」を考える能動的思考が、この問題の解決につながる一歩だ**と考えています。

しばらく熟考した結論ですが、今後も Lifehacking.jp ではこうした「時間泥棒」への戦い、「受動的思考」への戦いを挑むことで、ちょっとでも世の中の役に立ちたいなあと思っています。

それとは別に、現実的なコミットメントとして、今月からLifehacking.jp のブログを通した収益(Adsense、Amazon アフィリエイト、Linkshare、AMN、講演料、執筆物の全て)のうち、10% を以下の団体に寄付することを始めます。

  • Unicef:将来を担う子供たちを守るために

  • WWF:地球への「借り」を返すために

Mara Triangle:ケニアの国立公園を守るレンジャーたちのブログ 三番目の Mara Triangle については知らない方もいるかもしれませんが、マサイマラ国立保護区で少ない予算のなか献身的に密猟と闘うレンジャーたちの奮闘を読むことができる素晴らしいブログです。

「獣の女医」の滝田明日香さんの呼びかけで多くの寄付が集まっていることが記事になったり、いちいち寄付に対してどれだけ助かったかがブログを通じて応答があったりして、サポートを続けたい気持ちにさせられます。Twitter をやっている人はぜひ @maratriangle もフォローしてあげてください。

いままでブログのアフィリエイトは、サーバー代、書籍代、たまにセミナーに出席するための旅費程度をまかなっていましたが、実に不真面目な管理状況でした。読者にとって有用な本や製品にもっと目を光らせるようにするために、あえて 10% の寄付をすることで発破をかけたいと思ったのも、この取り組みの理由です。

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念のための注意ですが、だからといってアフィリエイトをクリックしていただくには及びません。アフィリエイトを踏むのは嫌いという人が数多くいるというのは理解していますし、ここで紹介されていたからといって、ここを通じて入手しなければいけない法もないからです。すべてご自由にどうぞ。

またこれは私自身のポリシーですが、自分にとって不要なものをやたら紹介することはしないつもりです。新刊だからといってむやみに本を紹介したり、自分が使ってもいないものを紹介するのは、それこそ「情報ダイエット」に反しますので。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。