ブートキャンプ方式で新しい習慣を身につける

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最近、ブートキャンプのことが気になって夢にまでみてしまいます。いえ、Mac OS X の Boot Camp ではなくて、ビリーズ・ブートキャンプの方です。

画像をみているだけできつそうな、あのハードなトレーニングがブームになるのは、言うまでもなくあの妙にキャラの立ったビリーのノリに引き込まれてしまうためでしょう。見てるだけでもおかしいですが、そのうちまねをしたくなってうずうずしてきます。いやあ、何なんのでしょうね、あの不思議な魅力は。

Boot Camp というのは、そもそもは Recruit Training の通称で、戦時に徴兵された兵士を短期間に兵士にするための強化合宿みたいなものです。

厳しい肉体的なトレーニングで有名ですが、それは基礎体力作りのほかに、行進や銃を撃ったり、戦ったりするときの基本動作を体にたたき込むという目的もあるからです。また、理不尽なまでに厳しいトレーニングをすることによって、いままで自由にのほほんと生きてきた若者を命令一つで前線に飛び込んで人を殺す、従順な「兵士」にするための「通過儀礼」という意味合いもあります。精神を入れ替える、というやつですね。

この Boot Camp 方式、新人教育や、新しい習慣を作るときにも使えるなあ、と思います。

先月紹介したロビン・シャーマ「3週間続ければ人生が変わる」にもありましたが、早起きにしろ、ユビキタス・キャプチャーにせよ、最初の7日間続けるのが本当に難しいのです。よく出てくるたとえですが、大気圏を突破するロケットが最も燃料を使うのは発射されてから最初の数分であるのと同じように、大きな仕事に取りかかるときに最初の壁を乗り越えられるかがとても重要になります

新しい習慣を導入するときに Boot Camp 方式でやるとしたら次のようなことを念頭にプログラムを作るとよさそうです。

  • 理屈はぬきでとにかく「型」が体にしみこむまで最初は徹底的に行う: プログラミングだったら、いくつかのパターンが本を見ないで書けるまで詰め込み。学習だったら、とにかくよくわからなくても素読で詰め込み、など。

  • 7日間の成果を測定可能にしておく: ビリーズ・ブートキャンプの成果が体重で量られるように(あのうち、どれくらいが汗で抜けた分だろうかという疑念はありますが…)、ここまでできた! という達成感は必要。失敗した場合に「自分はダメだ」というネガティブな敗北感を醸成するよりも、数値的に「ここが足りない」という次の戦略を立てられますし。

  • 最初の抵抗感をなくす: ビリーが成功している理由はまさにここです。「きついトレーニングなんて嫌だなあ」と思っている人を「いいから、やろうぜ!」という風なノリで引き込んでいます。自分一人の習慣を作る場合は、なるべくそれを楽しいことと抱き合わせにして、苦行をしているように感じさせない工夫が必要かもしれません。

この方法で効果があると思うのは、何よりも語学です。ヘブライ語を授業で受けていたときに意味が一つもわからないのに旧約聖書の最初の一節を暗記させられました。おかげで今でも暗唱できます。

新しい仕事の分野にとりくむときに、新しく身につけなきゃいけない技術や知識が多すぎて「どこからとりくめばいいのだろうか」と呆然とするときがあります。こういうときにも何が最も良い方法かなどと悩むより早く、手を付けたものから丸呑みしてゆく勉強方法のほうが結局成果は早く出たりします。これもブートキャンプといってもいいのかもしれません。

夏も近いですし、肉体面と精神面で、何か一つずつ新しく身につけたい習慣を作って強化トレーニングしてみようかな。

ヴィクトリー!

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。